電力供給を支える現場力③
-東北電力 原町火力発電所復旧の奇跡-
竹内 純子
国際環境経済研究所理事・主席研究員
<電力事業関係者の『供給本能』に思う>
驚異的な回復力を見せたのは原町火力発電所だけではない。東北電力では、震災直後管内で最大約466万戸(延べ停電戸数486万)が停電しているが、3日後には約80%、3月末時点では96%で停電を解消している。それをなし得た原動力をなんと表現すれば良いのか、私は言葉を持たない。自らも被災者でありながら現場に踏みとどまり続けた東北電力社員のみならず、電力事業に関わる関係者全ての誇りと責任感にただ敬服するのみであるが、被災して不安な方達に一日でも早く灯りを、の一念が彼らを突き動かしていたであろうことは、その後東北電力が災害復旧の記録として発行した冊子のタイトルが「とどける」であることからもわかる。インターネット上でも閲覧できるので、ぜひ皆さまにも一読いただきたい。私自身、昨年春の嵐で首都圏が一部停電した折に、「電力会社社員の『供給本能』に思う」という文章を書いたが、今回の取材でも『供給本能』を存分に見せていただいた。なお、 読者の皆さまには、昨年アメリカで起きたハリケーンサンディによる停電復旧との比較分析なども含む「電力システム改革を斬る」のコーナーも是非訪れていただきたい。東日本大震災の後、日本では電力システムや価格メカニズムにばかり注目が集まったが、電力供給を支える現場力を含めて日米の停電と電力システムの比較を試みた、ユニークな論考である。
電力というインフラの中のインフラを守る現場力が、一つの財産であることは間違いが無い。今後も被災した地域の復興を見守るとともに、電力システム改革議論がこうした現場力の維持・強化に大きな影響を与えることのないよう、推移を追いかけていきたいと思う。
最後になりましたが、改めて東北地方太平洋沖地震で亡くなられた方のご冥福を、未だ安否不明の方の一人でも多くのご無事を、被災された方々の安全と健康を、そして、被災された地域の完全なる復興とを心からお祈り申し上げます。