二国間オフセット・メカニズムを通じた鉄鋼省エネ・環境技術の世界への普及促進
岡崎 照夫
日本鉄鋼連盟 国際環境戦略委員会委員長
省エネ技術の普及を阻害している重要な障壁(いわゆるバリア)の一つとして、技術情報の不十分さがあげられている(APP鉄鋼タスクフォースにおける、バリア分析)。この対策として、NEDO省エネモデル事業による、実プロジェクトで現物を通じた、設備・操業技術などの周知・普及などがある。図1に示す、中国におけるCDQの普及基数推移をみると、この技術情報の周知などが普及促進策として効果的に機能している。
2.二国間オフセット・メカニズムによる普及促進(ステップ論)、日印鉄鋼業の二国間連携事例
現在、日印両国の鉄鋼関係者にて、インドにふさわしい所謂、インド向けにカスタマイズされた技術集(「技術カスタマイズドリスト」)の作成を行っている。作成に当たっては、まず、鉄鋼業に関する世界中の省エネ・環境技術を網羅した「技術フルリスト」を作成した。データソースとしては、前述のAPP-SOACTハンドブック、NEDOの省エネ技術集、米国環境保護庁のBACT(Best Available Control Technology)リスト、欧州IPPC-鉄鋼業BATレファレンス・ドキュメントを使用した。これらに記載のある鉄鋼関係の省エネ・環境技術を一覧的にまとめると、136件に上る。「技術カスタマイズド・リスト」は、この「技術フルリスト」から選定した。この選定においては、日印官民連携による共同作業を行うこと、世界最高水準を誇る日本鉄鋼業界の“経験”を活かすこと、インドの諸条件(環境保全、政策/技術的課題、エネルギー構成、価格条件等)を勘案することなど注2)を条件として選定作業を行った。現在、「技術フルリスト」上の136技術から17技術まで絞り込んだ「技術カスタマイズド・リスト」ドラフトが完成し、次回東京会合(2013年2月)で議論し、確立(図2参照)。
二国間制度と「技術カスタマイズド・リスト」の関連に関しては正式な交渉の場で議論されるものの、このリストはポジティブ・リストとしてふさわしいものであると考えられる。
表3.二国間オフセット・メカニズムから見た、製鉄所のエネルギー効率改善のためのPDCA
ステップ1 計画P |
カスタマイズド・リストに基いて導入対象技術を選定 排出削減ポテンシャルや経済性から、導入の優先順を設定 |
ステップ2 実行D |
技術・設備の稼動後、その稼動実績を定量的に把握 |
ステップ3 検証C |
稼動実績の評価と、計画値との較差分析 総合エネルギー効率への寄与を評価 |
ステップ4 見直しA |
導入した設備の稼動実績、総合エネルギー効率の変化、[法規制等]を踏まえ、必要なら、中期的な設備導入計画を見直し |
- 注2)
- エネルギー効率改善(CO2排出削減)に加え、地域環境問題(SOx・NOx、粉じん、水処理など)やリサイクル問題などへの副次的効果(コベネフィット)に関する検討