原子力規制委員会の活断層評価に思う
行政訴訟による法的決着も視野に入れ、適正な判断をうながせ
GEPR
Global Energy Policy Research
(エネルギー研究機関GEPR(グローバルエネルギー・ポリシーリサーチ)からの転載。)
委員会に正当性はあるのか
原子力規制委員会の動きが変だ。というのは、原発を十分な論議するための時間の確保を怠り、一方的な決めつけや事業者の意見に耳を貸さない姿勢が露骨に目立つからだ。
規制委員会の専門家チームは、そもそも外部有識者の選定において関係学会からの推薦を受け、規制委員会(事実上島崎委員長代理とメンバー)が決定するという形で決められた。このプロセスはおかしいのではないか。この委員会に委ねられたのは「活断層の活動性の判定」という極めて重大な判断だ。大飯、敦賀、東通の調査を行なったメンバーを見る限り、活断層研究の専門家がほとんど入っていないという声も関係者の中では聞かれる。しかも反原発派と共著を出す研究者もメンバーにいる。
将来のエネルギ-需給に大きな影響を与える判断をする人事である以上、それぞれの専門委員について、研究者としての過去の研究実績やその業績は十分かということに加え、電気事業者等との関係だけでなく、思想に偏向が無いか、十分な資格審査を済ませてから委員に任命すべきではないか。自民党政権になったあと、国会同意が規制委員会人事では必要になる。専門委員も、その経歴と正当性について厳しくチェックしておくべき重要な人事事案である。
活断層認定の判断は妥当なのか
一方、これまで俎上に上がった三地点は、いずれもかなり以前の安全審査や、耐震バックチェック途中の地点であった。これらについては、当時の規制当局が可能な限りの専門家による審議を経て一定の結論を導いたものばかりである。それを2006年につくった基準に照らして、活断層に認定するという遡及適用は妥当であろうか。
今回の規制委員会の面々がこれら当時の審議過程や報告書を十分読んで審査に臨んだのであろうか。仮に報告書を読んでいたのであれば、「ここがおかしい。ここが全体として矛盾している」という技術的な解明プロセスがまったく見えない。
例えば、東通原発について東北電力は認定された地層を「膨潤作用」、つまり地層が膨らみ活断層に見えていると主張している。東北電力側は多数の仮説を立てて現象面との対比を議論し、消去法でこの説にたどり着いているわけだから、その説に疑義がある、あるいは活断層であるという説を導くのなら規制委員会側が同じプロセスを経るべきである。それが技術の正解ではないか。それなのに、規制委員会は東北電力に立証責任を持たせている。政治ジャッジを聞きたいわけではない。
また敦賀では、事業者の概要説明、専門委員の所見説明の後に事業者の質疑応答は許されず、2時間で打ち切られた。議論が極めて短時間で収束していて活断層であるという結論に至る過程が不自然かつ恣意的に感じたのは私だけではないはずだ。
活断層の問題は、1+1=2とは行かない。自然科学の一種でもあり、観察結果の提示、現象面の体系化、理論的説明を経て学説が形成されていくものとされる。単純に言えばだれも地球の中を直接見た者はいないのだから。確かに学説も定説化した後に新たな現象が観察されると覆ることすらある。まさに真実はかなたの神のみぞ知るである。
加えて言えば、本当の意味で中立的、客観的な審査であるというならば、規制委員会は専門委員の人選をやり直し、委員長代理を含めた検討会の面々をそっくり入替えて審議をした場合、はたして同じ結論になるだろうか。
今求められるのは、技術を持っている者同士(規制側・事業者側)の誠実な議論であり、権威と企業のやりとりでない。規制委員会の面々も誤解をしてもらっては困る。