エネルギー問題とイソップ寓話
徳本 恒徳
ガス会社OB
翻って考えてみれば、地球上の資源が有限である以上、日本に限らず地球も貧乏なのだ、ということだろう。我々は誰でも、自分の世代だけでなく将来の世代にも安心して生活できる持続可能な環境を残したいと願っている。エネルギーの持続可能性を求めるとすれば、時間的なスパンをどの程度に考えるか。100年持続すればその後はどうなってもいい、というのであれば話は簡単だ。化石燃料を好きなだけ使えばいい。しかし、百年では余りにも短すぎるだろう。われわれは今かりそめの夏に生きているのかもしれないが、結局のところ、まだ手にしていない持続可能な社会が実現するまで、有限な資源で食いつないでいる状況ではないか。原子力発電も、ウラニウム資源が有限である以上、今のままでは持続可能なシステムとは言えない。一方、つい十年前までは非在来型という分類であった膨大なシェールオイルやシェールガスが、エネルギー資源として経済的に利用可能となったことは朗報であるが、これとても持続可能なエネルギーシステムを確立するまでの時間的余裕が増した、ととらえるべきであって、化石燃料を浪費してよいということではない。
持続可能な社会はまだ実現しているわけではなく、課題は山積している。再生可能エネルギーとして脚光を浴びている太陽光発電も、パネルの製造から廃棄に至るまでに必要なエネルギーに対して、十分大きい電気エネルギーが取り出せるためには、更なる進化が必要であろう。風力や太陽光など安定性に問題を抱える再生可能エネルギーの本格的な利用には、バックアップを含めたエネルギーインフラの整備が欠かせない。省エネについてももっと高度な水準に挑戦する必要があろう。我々の暮らし方も変わらなければならないかもしれない。こういった変革には時間がかかるが、幸いなことにその実現まで食いつないでいく時間は残っている。資源貧乏国日本でこそ、持続可能な社会の構築に向けた先進的な取り組みを進めたい。その結果は必ずや世界に通用するはずであるし、日本の経済力の強みにもつながるだろう。