原発再稼働の現場(大飯原発を例にして)


国際環境経済研究所前所長

印刷用ページ

 基本的なことではあるが、PWR(加圧水型炉)とBWR(沸騰水型炉)の違いも今後話題になってくるだろう。北海道及び関西、四国、九州の各電力会社が導入しているPWRは、原子炉の中で高温・高圧の水を作り蒸気発生器で熱交換を行うことで蒸気を作る構造であり、原子炉の中で水を沸騰させ蒸気を作るBWRと、構造的に大きな違いがある。蒸気発生器からの蒸気で駆動するポンプにより、電源がなくても蒸気発生器に給水し原子炉を間接的に冷却することが可能であるというメリットもあわせ持つ他、格納容器の大きさが同等出力のBWRと比べて7倍程度大きく、水素濃度上昇に対する裕度があると聞く。ただし、PWRは構造上機器や配管など設備が多いため、その点にはより多くの注意が必要となる。
 こうした構造の違いがシビアアクシデント対策の違いに反映されることは当然である。今後立地地域の住民に対して、国民に対して、原子力の安全対策を丁寧に説明する必要があるが、そのときに日本にある2つの炉型の違い、シビアアクシデント発生可能性や発生時の対処のしやすさなど、メリット・デメリットも含めて明らかにしていくことが求められるだろう。
 
 大飯原発でもハードウェアの対策は様々取られてきていることは理解したが、技術をコントロールするのは人間である。ヒューマンファクターや組織のガバナンス、シビアアクシデントに向けたトレーニング、周辺地域の情報収集と防災対策・訓練について、不断のチェックと改善が必要なことは言うまでもない。安全性向上への努力に終着点は無いという謙虚な気持ちと、顔が見えるコミュニケーションが、再稼働に向けての鍵となることを指摘しておきたい。

記事全文(PDF)