電力供給・温暖化のトンデモ本に要注意!

データや理論をきちんと判断する姿勢が必要に


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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「温暖化は怖くない」と本当に主張できるのか?

 広瀬氏はドイツの世論調査も取り上げ、「温暖化は怖くない」という人の比率が58%もあり、今や温暖化を信じているのは日本人だけという主張もしている。しかし、「温暖化は怖くない」という意見は、「温暖化が人為的要因で発生していない」と同じではない。この世論調査から、ドイツ人が温暖化を信じていないと主張するのは無理なのではないか。

 実際に、調査大手の米ギャラップ社が2010年に世界111カ国で行った世論調査によると、ドイツでは、温暖化が人為的な現象によるという人の比率が58%、自然現象という人が18%、両方に起因するという人が20%だった。つまり、我々の活動が温暖化を引き起こしていると考える人の比率は78%ということになる。

 確かに、人類の活動が温暖化を引き起こしているという人の比率が最も大きい国は日本であり、82%が「人為的な影響」、5%が「人為的な影響もある」としており、合計で87%が我々の活動が温暖化を引き起こしているとしている。

 これに対し、米国では、温暖化が人為的な影響ととらえている人は35%にとどまっており、47%が自然現象、14%が両方の原因としている。我々の活動が起因して温暖化が進んでいるとの意見は49%に達しており、自然現象により温暖化が発生していると考えている人の比率は気象予報士よりも低い。

 ここまで挙げてきたように、世の中に出回っている情報がすべて正しいとは限らない。特に、エネルギー・電力問題は、正確なデータに基づいて議論することが欠かせない。間違ったデータと思い込みとその場の感情で議論するのは止めて欲しい。エネルギーや電力の問題は、生活と経済がかかった最も重要なテーマの一つであり、最も冷静な議論が求められている。

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