再生可能エネルギーの正しい導入方法を考える
山本 隆三
国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授
菅直人首相が退陣の条件の一つにした、再生可能エネルギー促進法案が国会で可決されそうである。これは、風力、太陽光発電などの再生可能エネルギーからの電力を固定価格で10年以上の期間にわたり購入するというものだが、現在の形ではかなり問題のある法案だ。私は、7月9日に放送されたNHKの「週刊ニュース深読み」で、賛成派の飯田哲也氏と法案を議論する機会があったが、時間切れになり、すべての論点について議論することができなかった。そこで、この場で二つの論点を示しておきたい。
【電力料金の値上がり額】
電力の固定価格買い取りに要する費用は、電力料金の形で電力の需要家が負担する。この結果、電気料金は値上がりする。値上がり幅は、買い取り価格と買い取り電力量により決まることになる。値上がり額によっては、国民生活と産業活動に大きな影響が生じる。では、値上がり額はいくらになるのだろうか。
再生可能エネルギーごとの買い取り価格と導入量を以下の表のように仮定し、2020年の買い取り価格総額を計算してみた。
現在の再生可能エネルギーの導入量は、太陽光発電が300万kWから400万kW、風力発電が300万kW弱、地熱発電50万kW強程度と推定されている。上記の仮定通りに進めば、設備導入量は一挙に増加する。半面、設備量の比較では日本の全電源の20%を占めるようになるが、発電量では全体の5%程度に止まる。一方、仮定通りに進めば、2020年の固定価格買い取り制度に基づく負担の総額は1兆1000億円を上回る。標準家庭の追加負担額は年間4000円強、月に25万kWhを消費する中規模工場での追加負担額は年間約360万円となる。
【系統安定化費用】
安定的に発電できない太陽光や風力発電を導入するには、送電系統を安定的に運用するための送電線能力の増強とバックアップ電源が欠かせない。しかし、仮定したような大量の太陽光、風力発電を導入するには、送電線能力の増強だけでは不十分だ。このため、蓄電池の導入により系統の安定化を図ることが必要となる。
3500万kWの太陽光発電設備導入時に必要な系統安定化費用については、経済産業省次世代配電ネットワーク研究会が検討を行っており、費用は2兆~24兆円とされている。この費用負担は、2020年時点の全需要家平均でkWh当たり0.46円から5.46円になる。買い取り価格の負担に加えて、標準家庭で年間1600円から2万円弱の追加負担が数年間にわたり発生する計算になる。