正しい節電で、楽しく気楽に生活する
小谷 勝彦
国際環境経済研究所理事長
東京電力や東北電力管内では7月から、夏期の使用最大電力の15%削減が始まるが、これに向けて、企業でも家庭でも、さまざまな取り組みが始まっている。廊下やエレベータホールの消灯はもちろん、工場の操業の見直し、さらには西日本への生産移管やデータセンターの移設などである。しかし、テレビで先日紹介された「電灯を消して暗いなかで食事をしている家庭」には、さすがに違和感を覚えた。
今、節電が必要な理由は、夏場のピーク需要時に、原子力発電所や火力発電所の停止による供給力不足が予想されるためだ。7~9月の平日(9時~20時)の最大使用電力を15%削減することが求められている。電力会社は電力ネットワークの系統電力監視を行っており、企業や家庭の電力需要の動きをリアルタイムで把握し、電力需要の増大にあわせて瞬時に火力発電所の出力を上げて供給量を増やしている。しかし、今年はピーク需要に対応する供給力が不足し、大規模な停電を引き起こすことが懸念されている。
こうした状況下で企業や家庭がやるべきことは、まず、ピーク需要を抑えることだ。ピークを削ってなだらかな山にする。たとえば、図1のように、休日のシフトは効果的な対策である。また、1日のうちでも、図2のように昼間と比べると夜間や早朝は低くなっている。今回の措置が平日の9時~20時を対象にしていることからわかるように、夜間は電力使用が少なく、供給不足の心配はない(しかも、夜間電力料金は安く設定されている)。
したがって、ピーク需要を抑えるだけなら、早朝勤務や深夜勤務に変更するのも有効なのである。逆に夜間電力は供給余力があるので、無理して夜の照明を落とす必要はない。私が違和感を覚えた「暗闇で食事をするような耐乏生活」を無理して実践する必要はない。
今、緊急の課題となっているのはピーク対策であって総量抑制ではない。地球温暖化対策の観点からはエネルギーの総使用量を抑制しなければならないが、一方で「正しい節電をして、楽しく気楽に」生活しないと、長続きせず、危機を乗り越えられないのである。