地球温暖化に保険の考え方は適用できるか


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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 大学で担当している「環境政策論」の授業の一環として、アル・ゴアの「不都合な真実」を学生に見せてコメントを書かせた。学生のコメントで多かったのは、「映画では海面が6m上昇すると言っていたが、授業で学んだことと違う」というものであった。

 授業では、「海面上昇はあっても、21世紀末で数十cm程度だろう」と教えている。6mの海面上昇がすぐにあるかのような映画の説明に、学生は違和感を抱いたようだ。学生からは次のような質問もあった。
「映画では、ハリケーン“カトリーヌ”は温暖化が引き起こしたと言っていたが、大きなハリケーンは昔からあったのではないか」
というものである。確かに、何かがあるたびに、すべて温暖化が引き起こしたというのは無理がある。

 地球規模で発生している問題については実証が難しい。二酸化炭素などの温室効果ガスは、実際に温暖化を引き起こしているのだろうか。この答えを知ることは、実は難しい。実験室では温室効果を示すガスが、地球規模でも同様のことを引き起こすかを証明することは困難だ。地球の気候を変える要素は太陽の活動をはじめ数多くあるからである。

 このために、温暖化問題については、多様な意見が表明されることになる。アル・ゴアの対極には「温室効果ガスは温暖化を引き起こしていない」という意見もある。温暖化懐疑派と呼ばれる人たちだ。

 どちらの意見が事実に近いのか。その答えを知るのは100年後、あるいはもっと後かもしれない。それならば、今、われわれはどうすれば良いのだろうか。温室効果ガスが温暖化を引き起こしていると断定できない以上、何も対策をしなくて良いのだろうか。経済学ではリスクがある時にどう考えるのだろうか。