米民主党は原子力も現実路線か


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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(「EPレポート」からの転載:2020年9月21日付)

 温暖化対策を進めようとすると原子力発電を利用するか否かの選択を避けては通れないが、環境NGOの多くは原子力発電には反対だ。その理由は廃棄物、過酷事故の可能性などにある。米民主党の大統領選候補者選びでも原子力発電が一つのテーマだった。有力候補の一人であったサンダース上院議員は、核廃棄物の問題から強く反対していたが、候補者に選ばれたバイデン氏、ハリス氏は意見を鮮明にしていなかった。

 そんな状況下で発表された大統領選の民主党綱領は、気候変動問題への対処のため2050年までに温室効果ガスの純排出量をゼロにすること、35年に電力部門の脱炭素化を図ることをうたい、今後5年間で、5億枚の太陽光パネルを設置、6万基の風力発電設備導入目標も掲げている。設備能力に換算すれば、太陽光1億5000万kWと風力1億8000万kW程度になり現状のそれぞれ8100万kW、1億600万kWを大幅に引き上げることになる。再エネ導入量が急増すると送電線増強も必要になり、その投資額が巨額になりそうだ。

 新型原子炉の導入促進も目標に掲げられている。ギャラップの世論調査によると米国民の間では原子力賛成と反対が拮抗している。性別、学歴別賛成を見ると男性56%、大卒60%だが、共和党支持者の間では原子力賛成が65%と高いものの、民主党支持の中では原子力反対が57%、賛成が42%となっている。反対が多い中でも、あえて48年ぶりに原子力導入を打ち出したのは、原子力抜きでは35年のCO2フリー電源100%は達成できないとみたためだろう。

 現実路線だが、再エネ設備を米国で製造することもうたわれている。しかし今は、太陽光パネルは中国製が主流だ。新型原子炉導入を目指す一方、再エネについては非現実的目標を掲げ、矛盾した内容になっている。かつてオバマ元大統領もニューグリーンディールを大統領選で持ち出し500万人の雇用創出をうたった。むろん実現しなかったが、今回も選挙戦のキャンペーンだけで終了するのだろうか。