次なる半世紀へ ~日本の持続的成長とエネルギーを通じた貢献(前編)~
中島 伸二
東京ガス株式会社 サステナビリティ推進部 部長
国内初の液化天然ガス導入から半世紀
2019年11月4日、東京ガスグループは液化天然ガス(LNG)導入50周年を迎えた。公害が大きな社会課題となった高度経済成長期の1960年代、当時の経営者が「青い空を取り戻したい」という強い思いを抱き、都市ガス原料として選んだのがLNGだ。不純物を含まず、比較的少量のCO2しか出さない革新的なエネルギーとして登場したLNGは、50年の年月を経て日本の基幹エネルギーの一つになるまで利用が拡大し、今私たちの暮らしと社会を支えている。
当社グループは、エネルギーの安定供給だけでなく、クリーンな天然ガスを活用したものづくり、スマートエネルギーネットワークによる都市づくり、燃料電池など新技術を利用した暮らしづくりなど、エネルギーソリューションを通じ、日本で、世界で、この新しいエネルギーの普及拡大をリードし天然ガスの時代を切り拓いてきた。エネルギーで変革を起こし持続可能な社会の実現に挑戦することは、SDGsの精神にも通じる、創立者・渋沢栄一が大切にした公益追求への高い志であり、当社グループのDNAでもある。
ふたたび新たな挑戦へ
21世紀に入り、気候変動をはじめとする社会問題は深刻化し、脱炭素化が大きな潮流となっている今、SDGsに代表されるように、地球市民として社会や地球の問題を自分ごととして考えることが当たり前になりつつある。また、2015年のパリ協定採択以降、CO2を排出する化石燃料に対する世界の視線はより厳しくなっている。さらに日本では、エネルギーの分散化や自由化の進展も受け、さまざまな付加価値型の競争が激化している。
そこで昨年11月、次の半世紀を見据え、不確実な時代にあっても進むべき方角を示す羅針盤として、当社グループは経営ビジョン「Compass2030」を策定し、50年前と同様、新たな挑戦に立ち向かう決意を示した。(https://www.tokyo-gas.co.jp/Press/20191127-01.pdf)天然ガスは、供給安定性・環境性・経済性のバランスに優れており、私たちは石炭・石油を使用している世界各地域のエネルギー源を可能な限り天然ガスに転換していく。さらに、そのガスも単純に燃やすのではなく、コージェネレーションや面的利用などで高効率に使用しより低炭素化を進めていくことは重要で、この分野でしっかりと貢献していく。しかし同時に、化石燃料である天然ガスを扱うリーディングカンパニーとして、気候変動と真摯に向き合うことは私たちの責務であり、次なる半世紀に向けて「CO2ネット・ゼロに挑戦しリードする」ことを目標として掲げた。再生可能エネルギー活用をはじめ、排出されたCO2の回収、ガス体エネルギー自体の脱炭素化など、技術的なイノベーションに真正面から取り組み、これら新しい技術と天然ガスを組み合わせ、サステナブルな暮らし・都市・地球を実現するソリューションを提供していこうと考えている。