東京電力HD福島復興本社による風評対策の取り組み
三田 雅裕
東京電力ホールディングス株式会社 福島復興本社
弊社福島第一原子力発電所の事故からまもなく7年を迎えます。この間、多くの方々のご尽力により、居住や立入りが制限されるエリアの減少、発電所構内の状況改善など、復興・廃炉の進展が見られました。一方、科学的な見地だけでは解決が難しい風評被害と言われる買い控えの問題は、未だに払拭しきれておりません。
現在流通している福島県産品は、すべて放射線による健康影響を考慮し設定された基準をクリアしたもので、健康影響が懸念されるものではありませんが、震災後の出荷制限等により一度失われた商流は、徐々にしか回復していかないという現実があります。
震災直後から比べれば、現在では厳しい状況から改善してきているとも言えますが、小売店の商品陳列棚に置かれている福島県産品については、「以前と同じように取り扱っていただいている小売店」と「大変少ないか、全く置いていただいていない小売店」とが混在している状況が続いております。
弊社は、風評被害が継続しているという現状の改善を目指し、2018年1月31日、「風評被害に関する行動計画」を公表しました。弊社が事故の当事者として、これまで以上に主体性と責任を持った取組を行うために、生産・流通・小売りや外食関係者の皆さまからのご意見を伺いながら、この計画を策定しました。
このような動きにあわせ、風評被害払拭に向け福島県産品の取扱促進に繋がる活動等をより充実、加速させるため、2018年2月1日には新たに「ふくしま流通促進室」を設置し、本格的な風評被害払拭への取組をスタートしました。これまで風評被害に関しては、社内の複数箇所で検討や取組が進められてきましたが、この新組織の設立により、活動が一元化され、より強化・充実される形となりました。
事故以前は、発電した電気を安定的にお届けすることが社会における役割であった弊社にとって、商品のPRや流通へ関与することは知識も経験もなく、すべてが未知の世界でした。これまで電気事業に従事してきた弊社の社員が、手探りで、小売店や卸売業者に足を運び取扱いをお願いする活動を行い、すでに取扱っていただいている小売店をリサーチし、社員間で情報を共有し購入を促すなど、福島県産品の拡販を目指し奮闘しています。その成果の一つとして、2017年11月、福島県産米の取扱店を紹介した「こめまっぷ」を社内イントラネット上に公開しました。
「こめまっぷ」では、福島県産米を扱っている小売店を地図上で紹介しているほか、福島県に関するイベントなども紹介しています。福島を応援したい社員をサポートするため、福島に関する情報を総合的に発信しており、今後はお米だけでなく広く福島県産品の販売情報を共有し、購入を促進していきたいと考えています。
弊社は、これまで、商流の改善を支援するため、社内での購入拡大の取組を進めてまいりました。社員食堂での福島県産食材の利用、社員による毎月の福島県産品定期購入、社内での福島物産マルシェの開催など、社員一人ひとりが、食べる・買うという行動を通じて、福島復興へ主体的に関わることができるよう、現在も継続的な取組を展開しています。
また、自社内の取組の枠を越えて、より多くの方々に福島県産品を知ってもらい、買っていただきたいという想いから、福島県を応援しようという企業へ連携を呼びかけ、2014年11月に立ち上げた組織が「ふくしま応援企業ネットワーク」です。当初、福島第一原子力発電所の廃炉作業などに関連する11社で始めたこの組織は、その後、取組みに賛同する企業の輪が広がり、廃炉とは関わりのない企業も含め、2018年2月時点で101社にまで拡大しています。
これは、とても心強い連携の輪となっており、現在、各会員企業は、社員食堂での福島県産食材の利用、福島物産マルシェの開催やイベントへの参加促進など、多くの活動を通じて、福島県産品の購入拡大や商品の認知度の向上を目指し、活動の輪を広げています。弊社は事務局として、先にご紹介した「こめまっぷ」をふくしま応援企業ネットワーク会員各社にも展開することを目指すなど、風評被害払拭に向けた取組のさらなる深化を進めたいと考えています。
最後に、弊社は、福島県の美味しく魅力ある食品がより多くの小売店に並び、より多くの人に選ばれることを目指し、今後もさまざまな活動を進めてまいります。