石油会社はなぜ嫌われる

ロックフェラー財団のエクソン・モービル株売却の背景


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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SECも大統領候補も関心を示す事態に

 5月25日に開催予定のエクソン・モービルの株主総会では、気候変動問題に関し7提案が行われる。主要な提案は以下の通りだ。

世界の平均気温上昇を2℃未満に抑制する政策を採用する
石油・ガスの環境問題に詳しい気候変動の専門家を取締役に加える
化石燃料の消費減少が会社のビジネスに与える影響を分析する

 組合員85万人を抱える米国鉄鋼労組も、同社が行っているロビイング活動の内容と費用を明らかにするよう求める株主提案を提出している。鉄鋼労組の年金資産の一部は同社の株式に投資されているためだ。取締役に環境問題の専門家を加えるとの提案、温室効果ガス排出抑制の提案への昨年の賛成はそれぞれ21%と9.6%だった。 
 また、大統領候補も同社の気候変動問題に関する行動を取り上げている。民主党のバーニー・サンダース上院議員は昨年10月、司法長官に書状を送った。「エクソン・モービルは社内の科学者が化石燃料による温暖化を報告した後に、研究結果を隠蔽し、温暖化に関し懐疑的なキャンペーンを行った。この過去の行為は大きな懸念を引き起こすものであり、調査されるべき」。詐欺的行為があり、連邦法に反しているとの意見だ。
 その後、司法省による調査の是非を問われたヒラリー・クリントン前国務長官(民主党)も次のように答えている。「エクソン・モービルが国民に事実と異なる説明をした証拠は多くある。調査すべきだ」
 ロックフェラー財団によるエクソン・モービル株売却、あるいは鉄鋼労組による株主提案が出ている背景には、同社の株価が原油価格の下落を反映し、値下がりしている状況を無視することはできない。図は原油価格の値下りが始まってからの同社株価の推移を示している。

図 エクソン・モービルの株価推移 出所:エクソン・モービルホームページ

図 エクソン・モービルの株価推移
出所:エクソン・モービルホームページ

 米国のエネルギー問題の専門家の多くは、油価下落の背景には石油需要の低迷とシェールオイルの生産増があり、原油価格が1バレル=100ドルに戻ることはもうないとしている。石油会社の将来は明るくないとの意見だ。気候変動問題がこれから米国でも注目されるようになるとすれば、石油会社はさらに打撃を受ける。株式を保有している投資家としては、石油会社の株式を中長期的に保有するメリットはないだろう。ロックフェラー財団といえども資産運用を当然考慮した上での意思決定を行ったと考えたほうがよい。