環境と経済が両立に向かう『土壌汚染対策』とは(その10)
次世代の国内と世界を視野に入れた制度に
光成 美紀
株式会社FINEV(ファインブ)代表取締役
今後、日本国内では高齢化社会を迎え、これまで以上に防災や安全性に配慮した地域づくりが必要になっています。大規模な地震や自然災害の被害を緩和するためにも、老朽化して管理されていない施設や建物を解体し、地域を整備する重要性は高まっていると考えられますが、その時間は徐々に限られたものになっています。
国土の強じん化と共に、工場や住居、商業施設、空き家や空き工場などが混在する地域の再開発を進め、都市部近郊に職住、介護、医療施設等を備えた街づくりをすることは、地域や国全体に価値のある資産を残すことにつながるといえるでしょう。
≪世界に向けて≫
また、地球規模でみても、工場跡地の再生とコンパクトシティの開発は、人口が増加する世界全体で重要なテーマの一つです。
世界の人口は、毎週約100万人増えており、2030年には80億人を超えることが予想されています。今後15年間で、約10億人増加する人口の多くは都市部に居住するといわれます。イメージとしては、東京のような1000万人規模の都市が、新たに世界に約100カ所近く生まれるというものです。
水や食物だけでなく様々な資源を有効活用しながら、環境負荷の少ない都市を構築する上で、日本国内で活用されているような土壌汚染に関する厳格な一律基準は、費用対効果の観点から、採用できる国はほとんどないといえるでしょう。
また国内で、健康被害のほとんどない軽微な汚染にも採用される厳格な一律基準を運用することに伴うエネルギーや様々な資源の利用も正当化されるものなのか、考える時期に来ていると思われます。現実的な健康被害の防止に資する土壌環境規制への改善と共に、これまで産業用地として活用されてきた大小さまざまな土地を、すでに整備された道路やユーティリティなどの社会資本と共に有効活用できる仕組みがいち早く構築され、国内での経験が世界のモデルとなり貢献できることを真に期待したいと思います。