何がエネルギー貧困を作り出すのか-政策の選択肢


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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 電気料金が大きく上昇している理由はいくつかあるが、再生可能エネルギーによる発電が、多くの欧州諸国で増えていることも値上がりに影響を与えている。欧州主要国における再エネの発電比率は図‐2の通りに推移している。ドイツでは、再エネの発電による電気の買取りに関わる需要家の負担額、即ち買い取り価格と売電価格の差は、今年191億ユーロ(約2兆7000億円)と見積もられている。電気料金1kWh当たりでは6.24ユーロセント、円では約9円にもなり、標準家庭の負担額は年間3万円を超える。

 化石燃料を使用せずに、二酸化炭素を排出しない再エネの導入が必要なことは言うまでもない。しかし、再エネの導入により必需品のエネルギー価格が上昇し、エネルギー貧困層が増えるのは確実だ。結果、気候変動問題の対策をとりながら、違う社会問題を発生させることになる。地球規模の問題に取り組み、自国では貧困の問題を悪化させるというのは、正しい選択だろうか。
 どちらが、将来社会にとり大きなリスクなのか、問題解決への寄与度とその影響の度合いはどうなのか。再エネを最大限導入という政策を打ち出す前に、リスク分析と社会への影響が検討されるべきだった。