低炭素社会実行計画(一般社団法人 日本化学工業協会)
一般社団法人 日本化学工業協会
Japan Chemical Industry Association
化学産業は、様々な産業に多種多様な製品・技術を提供し、私たちの暮らしを支えている産業です。他の産業と異なる点は、化石資源を燃料としてのみならず、原料としても使用していることです。このようなユニークな特長を持った化学産業は、化学業界が排出するCO2量の90%をカバーする173社、2協会が、経団連・環境自主行動計画に引き続き、低炭素社会実行計画にも参加し、地球温暖化問題に、ソリューションプロバイダーとして貢献していきます。
化学業界が掲げる地球温暖化問題への対応の柱は、以下の4本です。
- 化学業界自身が排出するGHGの削減に努める
- 化学業界が提供する製品により、GHG排出削減に貢献する
- 海外への製品の普及・技術の移転により、GHG排出削減に貢献する
- 化学業界が推進する革新的技術・製品の開発、創出により、GHG削減に貢献する
以下に具体的な施策をご紹介いたします。
1. 化学業界自身が排出するGHGの削減
2005年度を基準として、2020年度における製品の生産予測に基づき想定されるCO2排出量(BAU排出量)から、150万トン削減する目標を設定しています。
既に日本の化学業界の生産プロセスは、エネルギー使用効率で世界の最高水準に達しており、削減ポテンシャルは小さいと言えます。しかしながら、設備更新時にIEA(世界エネルギー機関)が示すBPT(商業規模で利用されている先進的技術)を最大限導入するとともに、加えて省エネによるエネルギー効率の向上を図ります。
2.化学業界が提供する製品によるGHG排出削減への貢献
GHGは原料調達、製品の製造、輸送、使用、廃棄といった製品のライフサイクルで排出される。特に使用段階でのGHG排出は大きく、GHGの絶対量の削減については、製造段階だけを見る部分最適の視点より、製品のライフサイクル全体を俯瞰した全体最適の視点が重要です。化学業界では、エネルギー効率のよいGHG排出量の少ない部品・製品を供給することにより、GHG排出削減に貢献します。また、製品のGHG排出削減貢献を定量化する透明性のある、そして信頼性の高い評価手法(cLCA手法)を策定いたしました。この評価手法を用い、製品の排出削減貢献量を定量的に整理・報告することにより、環境にやさしい製品の普及に貢献する政策立案に協力いたします。
これまで活動で、排出削減貢献を定量化した事例の中では、建築用断熱材の採用で、非常に大きなGHG排出削減効果が期待されることが明らかになっています。
3.海外への製品の普及・技術の移転によるGHG排出削減貢献
化学業界は、世界最高水準の化学プロセスや省エネ技術、低炭素製品を海外に普及、展開することにより、積極的にグローバルでのGHG排出削減に貢献していきます。
一例としては、化学プロセスでの省エネ技術として、イオン交換膜法苛性ソーダ製造技術、GHG除去技術として、代替フロン等を無害化させる技術、低炭素製品として、逆浸透膜による海水淡水化技術、炭素繊維を使用した軽量化材料(自動車、航空機)、エアコン用DCモータの制御素子等があり、大きな削減ポテンシャルを化学業界は有しています。
4.省エネ・省資源の革新的技術・製品の開発、創出によるGHG排出削減に貢献
化学産業は、化石資源を燃料のみならず原料としても使用しており、低炭素社会実現に向けて、原料・燃料両面での技術開発が中長期的に重要な課題です。
ICCAは、IEAに協力して、2050年に向けた触媒を用いるプロセスでの省エネ効率化のロードマップを作成し、そのロードマップの実現のための政策提言等を公表しています。
低炭素社会実行計画では、2020年度以降を視野にいれて開発すべき技術課題、障壁について、政府ともロードマップを共有・連携し開発を推進します。
革新技術開発として、
①ナフサ接触分解、分離膜を利用した蒸留プロセス等の新規プロセス開発、
②化石資源を用いない化学製造プロセスの開発、
③LCA的に GHG排出削減に貢献する次世代型高機能材の開発
といった、化学ならではの革新的技術を開発し、GHG排出削減に貢献します。
また、革新技術として、ICCA(世界化学工業協会協議会)の活動を通じて、IEAと協力して、2050年に向けた触媒を用いるプロセスでの省エネ効率化のロードマップを作成し、そのロードマップ実現のための政策提言等を公表しています。