COP18参戦記 day4


国際環境経済研究所理事・主席研究員

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 現場に行ってみるとそれまで聞いていた話や自分の想像と全く違っていた、というのはよくある話である。この国連気候変動枠組み交渉においても、そんな驚きをいくつも経験した。その一つが「化石賞」である。
 COP開催期間中、国際的な環境NGO(Climate Action Network)が毎日、交渉に後ろ向きであると判断した国に皮肉を込めて送るのが「化石賞」(Fossil of the Day)だ。1999年のCOP5で始まり、それ以来COP期間中の恒例になっている。日本がこの化石賞を受賞したとなると、国内では一斉に「日本の主張、国際社会に受け入れられず」、「日本政府交渉団孤立」といった報道が流れる。COPに実際に参加してみるまでは、本当に日本政府が世界に受け入れられない主張をして孤立しているのではないかと心配したものだった。
 しかし現地に来て化石賞の発表現場を見てみると、印象は全く異なる。環境NGOの若者が学園祭の出し物のような寸劇とともに毎日の化石賞を発表し、模造紙に手書きで書いていく。各国交渉官やオブザーバー達も、お祭りを見るように写真を撮ったり、一緒に歌を歌ったりしている。「日本政府に化石賞」という報道で私が感じていたような悲壮感は全く無かった。
 化石賞選定の基準もClimate Action Networkという、温暖化問題に取り組む700以上のNGOのネットワーク組織の考えによるものだ。それ以上でもそれ以下でもない。今回のCOPで日本は2回化石賞を受賞しているが、1回目の受賞(11月26日)は「京都議定書から逃げた」というのがその理由だった。しかし、京都議定書を継続する事が温暖化対策に「前向きなこと」だとは、私には思えない。その理由は「国連気候変動枠組み交渉の転換点-京都議定書型枠組みの限界と今後の方向性-」に書いた通りである。ちなみに豪州とニュージーランドは共に京都議定書第二約束期間への参加を今回のCOP/MOPまで明らかにしていなかったが、豪州は1990年比で2020年に0.5%の削減を図るとして参加を、ニュージーランドは不参加を表明した。この結果、豪州は喝采を浴び、ニュージーランドは「大化石賞(colossal fossil)を受賞している。豪州は確かに京都議定書からは逃げていないが、この目標値の妥当性を含めて検証すべきではないのか。
 2回目の受賞(12月5日)は、「長浜環境大臣が全体会合で行った演説が具体的ではなかった」というのが理由であったが、数分の演説で具体的な貢献を述べることは無理というものだろう。決められた演説時間を守らずに話し続ける代表もいるが日本政府代表は毎年ちゃんと時間を守った演説をする。そして、長浜大臣が演説の中で言及したとおり、先進国全体で2010年から12年までの3年間に300億ドルの短期支援を行うとの、2009年のコペンハーゲン合意に基づく約束について、日本は133億ドル、先進国全体の約40%分を拠出し、コミットメント達成に大きな貢献を果たした。
 しかしながら、その事に対する評価はどこにもない。東日本大震災でこれだけのダメージを受けた我が国がここまでの資金を拠出しているのにもかかわらず、である。今回のCOPにおいては、先進国から途上国に対する資金支援をどう具体化させるかが主要論点となったが、途上国から先進国に対する感謝やどう使ったかの報告などが一切なく、日本政府交渉団も「これでは日本の納税者に対する説明責任が果たせない」と強く抗議の意思を表明したという。日本の、もっといえば日本国民の血税による貢献が相手国政府、国民、そして第三者である国際環境NGO、そして日本国民自身にもきちんと伝わっていないとすれば、日本政府のPR不足を指摘せねばならないだろう。しかし、マスコミの方々にもぜひこうした前向きな側面についても報道してほしいと思う。化石賞という、第三者的評価ももちろん重要であるが、自分たちが自分たちの政府の取り組みを具体的に把握し、自らの考えで評価することも必要だろう。

COP18で演説する長浜大臣

化石賞を掲示しているCANのブース(COP16にて撮影)

日替わりで模造紙に張り出される
“化石賞”受賞国(COP16にて撮影)

参加者の体力も限界に・・・・