再生可能エネルギーの本格導入を阻む3つの壁


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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電力の総量では足りていても送れないという事実

 欧州のように国を超えた送電線網がなく、電力供給を他国から受けることができない日本では、国内にバックアップの発電設備を持つことが必須となる。その場合の大きな問題は送電線網だ。例えば東京電力管内で、再生可能エネルギーによる発電量が天候により低下した場合、近隣のどこかの発電所から電気を送る必要があるのだが、送電線の能力には限度がある。

 今回の震災では、東日本の発電所が被災し、東北電力と東京電力では電力が不足することとなったが、周波数が異なる中部電力からは、3カ所の変換所経由で103万kWしか送電できなかった。この送電能力の問題は再生可能エネルギー導入時にも、大きな障害になる。

 また、東京電力と中部電力との間では、双方向で同量の電力を送ることができるが、電力会社によっては異なるケースもある。たとえば、東北電力から東京電力へは500万kWの電力を融通できるが、東京電力から東北電力には110万kW分しか送電できない。

 再生可能エネルギーによる発電を本格的に導入する際には、大きなバックアップが必要とされる。このため、隣接する電力会社からの融通を前提としない限り、発電量の大きな変動を伴う再生可能エネルギーの大規模導入は難しい。現状では、東京電力は最大でも603万kWの電力融通しか受けられないわけで、これでは、再生可能エネルギーの大量導入を支えることは困難だ。

 再生可能エネルギーの導入に際しては、まず、電力会社間の融通量を増加させる必要がある。しかし、これは簡単ではない。融通量を増やすには高電圧の送電線が不可欠だが、建設には時間がかかる。中部電力から東京電力に、周波数変換して送電する東清水変換所の設計能力は30万kWだが、現在の送電は13.5万kWにとどまる。これは、送電線が建設できていないためだ。

 20年前に着工された275kVの高圧送電線は、いまだ工事中であり、完成は来年度の予定だ。現在は応急対応の154kVの送電線が利用されている。30万kWの変換設備は完成済みだが、送電線の能力の限界により変換設備の能力が生かされていない。

 日本では、送電線の建設は、発電所の建設より時間がかかるケースがある。再生可能エネルギーの導入には、送電線整備が欠かせない。送電線整備の検討を早急に開始すべきである。

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