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東京大学先端科学技術研究センター特任教授

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海外に出かけるビジネスパーソンの義務

 もちろん、日本で書類をいくら読んでもなかなか実態は分からない。出張して、相手から直接話を聞くのはそれなりに意味がある。しかし、せっかく行くのであれば、自分の意見、あるいは日本が導入している政策について、相手を説得して日本の意見に賛成してもらうのも大きな役割である。相手から見ても、日本からの出張者との議論を通して学ぶ機会が多ければ多いほど時間を割いた意味があり、もう一度議論したいという思いに駆られるであろう。こうしたことで人脈ができ、彼らが来日するときに会いに来てくれたりするのである。

 もう一つ大切なことは、海外の有力紙への投稿である。例えば、英フィナンシャル・タイムス紙などでは、日本人の投稿は滅多に見かけない。残念ながら、今はじっと座って構えていれば外国紙の特派員が意見を聞きに来る時代ではない。積極的に投稿するとともに、海外に出かける際には、極力、現地の有力紙の記者と接触し、意見を述べることが必要である(筆者は力不足のため、これまで仏ル・モンド紙に一度しか意見が掲載されていないので、まったく偉そうなことを言えた立場ではないのだが)。

 気候変動枠組条約締約国会議(COP)には、毎年、多くの日本のビジネスパーソンが参加する。このことは、現地での雰囲気を知るうえで大変よいことだと思っている。このうち何人かは、サイドイベントで壇上に上がって意見を述べる。ところが大多数の参加者は沈黙し、単にイベントに参加するだけである。

 こうした国際的な場では、「日本が省エネにどのように努力をしているのか」あるいは「日本の自主的手法が、なぜうまくいくのか」を、ぜひ伝えてほしい。技術のことを何も知らずに観念的に技術が大事であるとか、単にモデルを回してGDP(国内総生産)の1%のコストで大幅削減が可能だなどと主張しているプレゼンテーターに対して、フロアからその無意味さを指摘するケースはまれである。この点はNGO(非政府組織)の方が勝っている。

 こうしたイベントに出席する際には、できるだけ司会者から目につきやすい席に座り、積極的に挙手をして発言すること。これがCOPに参加するビジネスパーソンの最低限の義務であると考える。

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