国際環境経済研究所を設立いたしました


国際環境経済研究所理事・事務局長

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 環境保全と持続可能な開発の実現のため、1992年に地球サミット(環境と開発に関する国際連合会議)がブラジルで開催され「国連気候変動枠組み条約」が採択されました。

 その後、第3回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)が京都で1997年に開催され、「京都議定書」を議決、限られた国に対し大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させ、地球温暖化対策を加速させる目標が設定され活動がスタートしました。わが国においても市民や企業、研究機関、行政などさまざまな部門で対策が実施されています。

 その結果、2008年度のわが国の温室効果ガス排出量は、京都議定書基準年の1990年と比較し1.6%の増加にとどまっています。1990年から2008年の実質GDP伸び率が23.8%だったことを考慮すると、各界の省エネ努力の成果が反映された結果と言えます。特に、産業部門では6.4%減少しており、景気変動や国内工場の海外移転などの影響だけでなく、省エネ活動等の地道で積極的な努力が表れた結果と言えます。

 一方、国会では、地球温暖化対策基本法案が審議されようとしています。同法には、温室効果ガス排出量を2020年までに1990年比で25%、2050年には80%削減という実現の道筋が見えない目標設定や、環境税の導入、国内排出量取引制度の創設などが明記されています。

 これらの政策は、「すべての主要国による公平かつ実効性ある国際的な枠組みの構築」に矛盾し、国民生活に与える影響、産業の海外移転加速に伴う雇用の流出、経済成長への阻害など、さまざまな課題を含んでいます。

 わたしたちは、地球温暖化対策への羅針盤となり、人と自然の調和が取れた環境社会づくりに寄与することを目指し、国際環境経済研究所(International Environment and Economy Institute)を立ち上げました。人類共通の課題である地球温暖化対策における、環境と経済の両立と経済社会のあり方に同じ思いを持つ幅広い分野の人たちが集まり、情報を発信します。

 また、地球温暖化問題の解決に向け、多様かつ適切な方向性を示すための情報収集と提供を行い、この問題に関する調査研究成果をもって、政府・自治体・研究機関・市民などに働きかけてまいります。これらの活動を通じて、わが国の産業が強さを取り戻し、それを支える環境技術開発がさらに進み途上国など海外に技術移転されることで、世界規模で温暖化防止対策が進む弾みになることも期待しています。

 メンバーは、産業界、研究機関、行政、NPO、メデイア等で地球温暖化対策の分野で活動した者、または活動している者のなかで、経済・産業・エネルギーの視点で情報を収集しながら論考を発信する機会を求めている幅広い分野の人たちで構成されています。

 今後、各メンバーが書き起こした解説記事や報告、意見などを多くの皆様にお届けできるようインターネットを通じて発信してまいります。わたしたちの活動にご期待ください。

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