書籍 データが語る気候変動問題のホントとウソ
杉山大志さんの著書ご紹介
杉山 大志
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹
書籍「データが語る気候変動問題のホントとウソ(電気書院)」を上梓しましたのでご案内します。
・著者:杉山 大志
・出版社:電気書院
・発売日:2025年4月12日
・ISBN-10:4485301257
・ISBN-13:978-4485301258
(以下「はじめに」より)
「人類の排出するCO2によって気候変動が起きており、地球は気候危機に直面している。破局を回避するために、日本は 2050 年までに CO2排出をゼロにしなければならない」――これが、巷(ちまた)でよくいわれている言説だ。政府も、このような認識のもとで巨額の予算をかけて対策をしている。
では、この言説は、どこまで妥当なのだろうか?
地球の気候とは、とても複雑なものである。したがって、その理解のためには、データをよく知ることが何より大事である。
気象観測や環境影響のデータを見る限り、地球温暖化による災害の激甚化などは起きておらず、気候危機説は支持されないことがわかる。
CO2の濃度が上昇し、気温がいくらか上昇していることは確かである。だが、その変化はいずれもゆっくりしたわずかなものである。これに対して人々や生物は絶えず活発に活動しており、ゆっくりした変化に対して特に意識することもなく適応してしまう(なお、この業界で適応とは「気候変動に対して人間や生物が対応すること」と定義されている)。
他方で、シミュレーションによる地球温暖化の被害の予測には、おどろおどろしいものが多くある。だが、シミュレーションの計算結果は、観測データとはまったく性質の異なるものだ。どのようなモデルにするか、どのような入力をするかによって、結果はどのようにでもなってしまう。シミュレーションについて、過去の観測結果と突き合わせて調べてみると、その予測は、信頼に足るものではないことがわかる。
良い環境のもとに住みたいというのは誰でも思うことである。だが、気候危機説というドグマ(教義)に陥ってしまうと、労多くして極めて有害な、CO2ゼロという極端な対策が採用されてしまう。まずはデータに基づいて、冷静に状況を理解しよう。すると、どのような対策が望ましいだろうか?
目次
第I部 気象観測データ
- 1
- 台風は激甚化していない
- 2
- スーパー台風は来なくなった
- 3
- 地球温暖化は30年間でわずか 0.3℃であった
- 4
- 猛暑の主因は自然変動
- 5
- 東京は都市熱ですでに3℃上昇した
- 6
- 大雨は激甚化していない
- 7
- IPCCは異常気象について本当は何を言っているのか
- 8
- CO2はすでに5割増えた(だが、これは悪いことではない)
第II部 環境観測データと社会統計データ
- 9
- ホッキョクグマは絶滅どころか増えている
- 10
- 海面上昇はわずかでゆっくりだった
- 11
- 南の島は海面上昇で沈んでなどいない
- 12
- 砂浜の消失は海面上昇のせいではない
- 13
- 地球陸地化:海面上昇にもかかわらず、世界の陸地面積は拡大している
- 14
- グレートバリアリーフのサンゴ礁は過去最高の状態にある
- 15
- 山火事は地球温暖化のせいではない
- 16
- 気候が温暖化すると死亡率は下がる
- 17
- 都市熱により東京の最低気温は6℃も上昇した
- 18
- 食料生産は増え続けている
- 19
- 気象災害による死亡は減り続けている
- 20
- 暑さによる死亡は減り続けている
- 21
- 自然災害による損害額は増加したのか
- 22
- 気候変動によって災害が 50年で5倍になったというのは本当か
- 23
- 気候変動で熱波が30倍も起こりやすくなったというのは本当か
- 24
- 気候は大きく自然変動してきた
- 25
- 東京では3℃の温暖化に問題なく適応してきた
- 26
- あらゆる気候への適応は農業の本質である
- 27
- 「気候変動への適応」よりも経済開発による「気候への適応」こそ重要だ
- 28
- 環境省もIPCCも不都合なデータを隠す
第III部 数値モデルによるシミュレーション
- 29
- 気温予測は計算する人によって大きく異なる
- 30
- 被害予測の前提とするCO2排出量が多すぎる
- 31
- 地球温暖化の計算は結果を見ながらパラメーターをチューニングしている
- 32
- シミュレーションは過去の再現すらできない
- 33
- 問題だらけのイベント・アトリビューション研究
第IV部 エネルギー政策
- 34
- 世界では化石燃料消費もCO2排出も増え続けている
- 35
- 太陽光発電や風力発電は高価である
- 36
- 太陽光発電のCO2排出は無視できない
- 37
- EVは環境に優しいのか
- 38
- アジアでは石炭火力発電所が増えている
- 39
- 日本がCO2をゼロにしても気温は0.006℃しか下がらない
- 40
- 日本のCO2排出減の理由は産業空洞化だった
- 41
- グリーントランスフォーメーションで経済成長は望めない
- 42
- 目指すべきCO2濃度は何ppmだろうか
- 43
- 国際政治の現実は気候変動問題の終焉を告げている
結論――日本はどうすればよいのか
- ①
- 気候危機説は誇張されている
- ②
- 不吉なシミュレーション予測は信頼に足らない
- ③
- 経済を犠牲にするのは誤りだ