執筆者:手塚 宏之

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国際環境経済研究所主席研究員、JFEスチール技術企画部理事 地球環境グループリーダー

  • 2013/01/21

    COP18の概要~産業界の視点(第1回)

    1.COP交渉の概要

     昨年もドーハで開催された国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の締約国会議(COP)に参加してきた。筆者にとってはバリのCOP13以来6回目のCOPである。一昨年以来、経団連の環境安全委員会国際環境戦略WG座長の立場で参加しており、交渉の経緯をフォローさせていただくと同時に、各国政府交渉団や産業界、NGO関係者などと対話を通じて感じたCOP18の概要について報告させていただきたい。 続きを読む

  • 2011/12/01

    COP17を巡る諸外国の動向等について

     国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)が南アフリカのダーバンで始まった。2012年末に第1約束期間が終了する京都議定書を、2013年以降も先進国に削減義務を課すことで延長することに合意できるか、はたまた米国や中国など京都議定書で義務を課されていない主要排出国を含む包括的な新たな合意に向けて道筋をつけられるかが焦点であり、「京都議定書の単純延長に反対している日本は途上国やEU(欧州連合)からのプレッシャーに抗し切れるか」といった文脈の報道が始まっている。

     しかし、COP17の論点や焦点はそのような単純な構図では割り切れない、複雑で重層的なものである。しかも、世界、とりわけ未曾有の経済危機、財政問題に直面する日米欧の先進国の置かれている政治・社会情勢は、経済を制約する形での環境政策を受け入れることに極めて慎重にならざるをえない状況下にある。環境と経済の両立を実現するとされてきたグリーン経済成長モデルも、英国で「エネルギー貧困」問題が顕在化したり、米国でグリーンニューディール政策が暗礁に乗り上げたりするなか、急速に勢いを失っている。

     本稿では、そうした各国をとりまく情勢をもとにCOP17に臨む各国のポジションについて解説し、なぜ国連交渉が行き詰っているか、その背景にある構造を明らかにする。さらに、そうした行き詰まりを打破して地球環境問題に具体的な進展を図るために、いかなる代案がありうるか、その代案に日本としてどのように貢献できるかについて論じてみたい。

  • 2011/04/28

    再生可能エネルギーは原発を代替できるか

     東日本大震災が引き起こした福島の原子力発電所事故は、東日本地域に深刻な電力供給不足を引き起こした。春先の計画停電、この夏の電力使用制限措置の発動など、さまざまな社会的混乱をよび、経済活動にも深刻な影響をもたらすことが懸念されている。

     津波の影響で被災・停止中の火力発電所については、相当な時間がかかるものの早急に補修され、順次立ち上がっていくものと想定される。しかし、すでに廃炉を決めている福島第一原発1~4号炉(3月30日勝俣恒久東京電力会長会見での方針)に加え、被害が少なかった5、6号炉や、福島第二原発1~4号炉については、原発事故が周辺地域に与えた放射性物質による汚染や、長期の退避生活を余儀なくされた周辺住民の感情を考えても、当面、稼働再開は難しく、短中期的な電力供給に供することは事実上考えにくい事態となっている。

     福島第一原発、第二原発の発電能力は910万kW(わが国の総原子力発電能力の約18%。原子力発電の総電力供給量に占める割合が2009年度で約29%であるから、わが国の総供給量の5%強が喪失する計算になる)と非常に大きい。これが事実上、恒久的に喪失する東日本における電力の供給不足は、安全性見直しによる全国の他の原発の稼働率低下の影響も考慮すると、わが国の中長期的なエネルギー供給体制の大幅な見直しを迫ることになる。

     こうした事態を受けて国内外でさまざまな分析が行われている。米ブレークスルー研究所(米カリフォルニア州にあるエネルギー・気候変動問題を専門に扱うシンクタンク)が興味深い論考をホームページに公開しているので、ここで紹介していきたい。

  • 2011/02/25

    新しい欧州排出権取引システムの落とし穴

     欧州連合(EU)では、2005年から温室効果ガスのキャップ・アンド・トレード型排出権取引制度(EU-ETS)を導入しているが、現在、第1期(2005~07年)、第2期(08~12年)に続く、第3期(13~20年)の制度設計が進められている。新制度は昨年末にその概要がまとまり、今春には、EU各国で審議、承認したうえで正式法制化されることになっている。ところが、この新しいキャップ・アンド・トレード制度に関して、『問題が山積みであり、施行すれば不満を抱く企業からの訴訟が乱発される懸念があるうえ、温暖化対策の効果の面でも疑問がある』との懸念が浮上している。

     問題を指摘したのは、2010年12月30日付の独シュピーゲル誌のオンライン版。 EU-ETSは欧州域内の主要産業を対象とし、EUの全排出量のおよそ半分をカバーする欧州温暖化政策の要の制度とされている。これを世界に先駆けて導入することで、他の先進国はもとより途上国にも同様の制度の導入を促し、世界的な排出権取引市場の創出をリードするというのが欧州の基幹戦略である。しかしシュピーゲル誌は、その肝心要の制度が「環境に資するものなのか、それとも単に負担の大きい官僚主義を生み出すだけのものなのか、誰にもわかっていない」と問題提起したのである。さらには「排出権取引が近い将来に世界的に拡大するという兆候はほとんどない」とし、欧州が突出して同制度を進めていることに疑問を投げかけた。

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