次世代エネルギー・ワークショップは日々進化中!


国際環境経済研究所主席研究員、一般社団法人 環境政策対話研究所 理事

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(「エネルギーレビュー」からの転載:2020年10月号)

 新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大は、我々の日常生活を大きく変えた。緊急事態宣言、テレワークやオンライン会議など人の移動を伴わない経済・社会活動は、エネルギー消費を大きく抑えたとも言える。

 2020年4月、国際エネルギー機関は、コロナ危機の影響で今年の世界の二酸化炭素(CO2)の排出量が年率で8%と、大幅に減少する見通しを伝えた。今後、コロナ禍による新しい生活様式が定着するかどうかも含めて、我々の生活に欠かせないエネルギーの将来について思いを巡らせるのを怠るべきではない。

 エネルギー選択や脱炭素社会への変革は、技術、産業構造、国際関係、価値観等が複雑に絡み合う。2011年3月の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故や、2016年11月のパリ協定発効を契機に、この議論は重要度を増す一方だ。この難問の解を求めることに真剣に向き合い、多様な選択肢の中から答えを導き出すためには、経済・社会のあり方や価値観をも含め、真摯な議論が求められる。長期を展望して課題解決に臨むには、未来社会を担う若い世代の積極的な参加が不可欠だ。

 2013年度から開始した「次世代エネルギー・ワークショップ」は、このことに照準を当て、議論の場を創り、徹底討議の実践を試みている。2016年度からは全国の大学や高等専門学校等の講義として採択されている。また、対象を若手社会人(40歳位まで)にも広げた。

 ワークショップの手法は、参加型テクノロジー・アセスメントに用いられている参加・対話手法(知識の習得→他者との対話→熟慮)にヒントを得、これに客観的なデータ等による定量的検証のためのエネルギーシミュレーション(地球環境戦略研究機関と国立環境研究所が開発した[2050低炭素ナビ]を基に作成したモデルを活用)を導入するなどの工夫を加え、環境政策対話研究所が人材開発用プログラムとして開発し、普及を図ってきた。

 このワークショップは、「30年後のエネルギー選択を考える」をテーマとする。若者たちが長期の視点に立ったエネルギー選択・脱炭素社会づくりに関心を持ち、「系統立てて理解する能力」「多様な価値観・異なる意見を有した他者と噛み合った議論を行うコミュニケーション能力」「納得できる考え方を導くための熟慮能力」という三つの能力を会得すること目的としている。

 これまで、エネルギー関連(電力、重電、再エネ)、製造業、サービス部門(金融・商社・情報・運輸)、建設・土木、環境ビジネス、シンクタンク・コンサルタント、経済・産業団体、NPO、地域組織、消費者団体、研究者(大学・研究所)、大学院生等から、各回約50名の参加を得ている。事後アンケート結果から参加者の満足度が高いことが伺えた。

 2020年度も、「第五回若手社会人向け次世代エネルギー・ワークショップ」の実施を2021年1月に予定している(http://inst-dep.com/free/ws)。例年どおり、参加者がエネルギー・気候変動に関する「基礎情報を共有」した上で、「グループ討議」を重ね、熟慮し、確たる意見にたどり着くことを柱として進めていく。

 従来、集合形式で実施してきたが、コロナ対策を勘案して、専門家のレクチャー・質疑応答、「五つの未来社会像」「八つの視点」を用いた類似価値観グループの編成とグループ討議、エネルギーシミュレーション、プレゼンテーション等ワークショップのプログラムを、全面的にオンライン化して実施できるよう準備を進めている。

 このようなオンライン化等、新しい生活様式の工夫が活かされ、これまで以上に「エネルギー・ワークショップ」参加者の活発な議論が得られることを願っている。