新型コロナが招く加州出力制御増


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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(「EPレポート」からの転載:2020年5月1日付)

 新型ウイルス感染が米国内で最も広まっているニューヨーク州の電力需要は4月第1週目に前年同期比8%減と大きく落ち込んでいる。カリフォルニア州でも電力需要は5%から8%下落しているが、加州の電力供給は他州より再エネ比率が高い特徴を持っているため、需要減の影響を大きく受けそうだ。

 温暖化問題への取り組みに熱心な加州は、再エネからの発電量シェアを2025年までに50%に、30年には60%にし、2045年に100%を目指す州法を制定している。加州政府によると2018年の発電量に占める比率は、太陽光・熱14.0%、風力7.3%だ。発電用設備量では太陽光・熱1180万kW、風力610万kWを持つ。小規模太陽光設備も多くあり加州の全太陽光設備は2740万kWだ。全米の電力事業用発電設備は11億9650万kW、うち太陽光・熱3220万kW、風力9500万kW。加州が太陽光・熱発電で大きなシェアを占め1位だが、加州の2010年の太陽光・熱発電設備量は48万kWに過ぎなかった。

 太陽光設備の急速な伸びは出力制御を招くことになり、その制御量は年々増えている。2018年実績では出力制御量は4.6億kWh、率は1.1%だったが、今年第1四半期の出力制御量は2018年同期比3.3倍に伸びている。加州では送電網の中での蓄電池の導入も行われているが、その量は限定的だ。コロナ感染による需要減少に加え、加州では今年から低層の建物新築時には太陽光パネルの設置が義務付けられたので、晴天の昼間の需要量はさらに減少し、出力制御量は増える。

 加州では供給過剰時の市場価格を利用して行う経済的出力制御と呼ばれる手法などが利用されているが、出力制御だけで対応できない時には隣のアリゾナ州を中心に輸出を行っている。この輸出価格はマイナスになっていることが多い。お金を付けて輸出するため加州の電気料金上昇要因の一つになっているとLAタイムズ紙は報道している。新型コロナにより経済、雇用情勢が悪化する中で電力輸出が増え、全米平均を約5割上回る加州の電気料金が上昇することになれば、消費者にとっては泣き面にハチだ。