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太陽光パネル廃棄費用の“積立制度”

大量廃棄時代に備え、2022年7月までに施行


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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(「月刊ビジネスアイ エネコ」2020年1月号からの転載)

 2030年後半に予想される太陽光パネルの大量廃棄時代に備え、廃棄費用の積立制度を整備しようと、経済産業省の総合資源エネルギー調査会に「太陽光発電設備の廃棄等費用の確保に関するワーキンググループ(WG)」が2019年4月に設置され、筆者もWGで議論に参加しました。同制度の中間整理がまとまりましたので、ポイントを解説します。

太陽光発電の主力電源化を目指すため、廃棄のことまで考えておくことは大事だ

太陽光発電の主力電源化を目指すため、廃棄のことまで考えておくことは大事だ

制度検討に当たっての原則

 12年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が導入されて以降、すでに稼働している事業用太陽光発電設備は50万件以上に上ります。その廃棄処理の責任は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づき、発電事業者や解体事業者などの排出者側にあります。
 政府は、10kW以上の事業用太陽光発電設備の廃棄などの費用の積み立てについて、18年に努力義務から義務化しました。同年7月からは、FIT認定設備の定期報告で、積立計画と積み立て進捗状況の報告を義務化しています。しかし、19年1月時点でも、積み立て実施率は低い状況です()。
 太陽光パネルは種類によって有害物質が含まれており、パネルを適切に処理し、不法投棄や放置の不安を払拭するため、積立制度を検討することになりました。
 制度の検討に当たっては、主力電源としての太陽光発電の継続・普及に資する制度にするため、「資金確保」「社会コスト」「長期安定発電」の3つの観点を原則としました。
 資金確保の観点から、稼働・未稼働を問わず、12年7月のFIT制度開始以降に同制度の認定を受けた10kW以上のすべての太陽光発電設備を対象とします。社会コストの観点では、太陽光発電事業者、買取義務者(小売電気事業者・送配電事業者)、費用負担調整機関などの関係者が負担するコストを最小限にします。
 また、長期安定発電の観点から、FIT制度による買取期間の終了後も、将来的な再投資が行われ、長期安定的な発電事業を促せるような仕組みを検討しました。

図 FIT制度の定期報告での積み立て進捗状況※2019年1 月末時点出所:太陽光発電設備の廃棄等費用の確保に関するワーキンググループ「中間整理」

図 FIT制度の定期報告での積み立て進捗状況
※2019年1 月末時点
出所:太陽光発電設備の廃棄等費用の確保に関するワーキンググループ「中間整理」

外部積立が原則

 FIT制度では、廃棄などの費用として資本費の5%が必要になると想定して調達価格が決定されています。解体事業者・廃棄物処理事業者などを対象にしたアンケート調査で、標準的な太陽光発電設備にかかる廃棄などの費用は、スクリュー基礎で1.06万円/kW程度、コンクリート基礎で1.37万円/kW、太陽光パネルにかかる廃棄などの費用は0.59万円/kW程度という結果が得られました()。
 調査結果の数字だけで廃棄などの費用が十分かどうかは判断できませんが、将来的な太陽光パネル処理技術の確立や、リユースの促進などによるコスト削減の可能性を考慮すると、実際の費用の相当分がカバーされる見通しです。
 すでに調達価格が決定した12~19年度の認定案件については、廃棄などの費用を一律、資本費の5%と想定しました。20年度以降の認定案件については、調達価格等算定委員会が定めた額とします。
 17~19年度までの入札認定案件については、当該年度の最低落札価格を乗じた額とします。20年度以降については、調達価格等算定委員会で定めた額となります。
 すべての案件が一律、調達期間の終了前10年間で毎月積み立て、廃棄費用の確実な積み立てを担保するため、第三者が積み立てる「外部積立」を基本とします。外部積立は、発電事業者の売電収入(調達価格)から積立金を差し引き、積立金の管理機関が源泉徴収的に積み立てる方式となります。FIT認定事業者と買取義務者の間で個別の契約変更などを行わなくても処理できるよう、法的な措置を講じる予定です。
 買取義務者のシステム改修などに一定期間が必要ですが、積立制度は遅くてもFIT制度施行から10年後の22年7月にはスタートする予定です。
 調達期間中は、積立金の取り戻しを原則認めません。ただ、調達期間中でも、太陽光パネルの全部または一部を廃棄し、その場所での発電事業を終了・縮小する場合は、パネルの放置・不法投棄を防ぐため、積立金の取り戻しを認める方針です。例えば、太陽光パネルの50%を廃棄した場合、その時点の積立額の最大50%を取り戻すことができ、残金は残りのパネルの処理のため確保されます。

表 太陽光発電設備の廃棄等費用額の調査結果 出所:太陽光発電設備の廃棄等費用の確保に関するワーキンググループ「中間整理」より抜粋

表 太陽光発電設備の廃棄等費用額の調査結果
出所:太陽光発電設備の廃棄等費用の確保に関するワーキンググループ「中間整理」より抜粋

再投資がしやすい内部積立

 例外的に、内部積立も認めることにしました。内部積立は、事業者が柔軟に資金を使えるため、再投資がしやすいというメリットがあります。対象は、長期安定発電を担うことが可能と認められる事業者です。条件としては、主に以下のようなものがあります。

FITで認定された事業計画で、再エネ発電設備が電気事業法上の事業用電気工作物に該当すること。
FITで認定された事業計画で、事業者などが電気事業法上の発電事業者に該当すること。
外部積立で積み立てられるべき水準以上の積立計画を作成し、その公表に合意すること
定期報告(年1回)のタイミングで、外部積立にその時点で積み立てられているべき以上の額が積み立てられ、その公表に同意すること。
金融機関または会計士などにより、廃棄などの費用の確保が可能と定期的に確認されていること。
上記①~⑤の要件を満たさなくなる場合に、遅滞なく外部に積み立てることに同意していること。

 積立制度の開始と並行して、経済産業省や環境省では太陽光パネルのリユース・リサイクルを促進する取り組みも進めています。太陽光発電の主力電源化を目指すため、将来の廃棄のことまで考えておくことは大事です。



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