「2050年に向けた環境・エネルギー政策のあり方」(2)

~次世代を担う社員たちが議論!~


国際環境経済研究所主席研究員

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次世代を担う社員たちからの提言!

 各グループの発表では、様々な視点から、鋭い意見や新鮮な提言が相次いだ。
 主な内容を、項目ごとに紹介しよう。

■エネルギー安全保障

  • ロシアが天然ガスの供給を停止した欧州の事例から、エネルギーの分散が非常に重要であり、日本もリスク分散を進める必要がある。
  • 電源の多様性確保が非常に重要。資源国になりつつあるアメリカも、原子力などを進め、エネルギー構成のバランスを取ろうとしている。資源のない日本においては、それ以上にバランスを考慮しなければならない。
  • S+3Eの視点の全てにおいて優れた電源はないので、結局はバランスを取って進めていくよりほかない。

■経済性と環境性のトレードオフ

  • 経済性と環境性の両立に関して、トレードオフという意見が最も多かった。電気料金が上昇し続けると、様々な弊害が生じるため、スペインのように固定価格買取制度を遡って変更したことは、強権的との批判はあるものの、参考になる。他方、温暖化対策も重要で、固定価格買取制度により再生可能エネルギーが普及したことも事実。経済性と環境性のバランスをどのようにとっていくべきか、各国の政策を見ながら検討する必要があるのではないか。
  • 再生可能エネルギーのコストと既存エネルギーのコストでバランスをとって考える必要がある。国民がどこまでの負担なら納得できるのか最適なラインを探りながら、エネルギー政策を進めることが重要。
  • フランスの電気料金は安価ではあるが、原子力依存度が高く、何らかの事情で原子力発電が稼働できなくなった場合を考えると、非常にリスクが高い。

■安全性

  • ある程度リスクを受け入れなければ、経済性を享受できない。技術開発を進めて安全性を高めていくことが重要。

■次世代社員から政府への提案

  • 国際社会へのアプローチも重要。中国が石炭を抑制するのは、自国の大気汚染問題が背景にあるのだが、他方、気候変動枠組条約などの国際交渉の場では、CO2排出量削減や温暖化対策を強く打ち出しており、日本も国際会議の場で、環境対策にしっかり取り組んでいることを上手に説明していく必要がある。
  • 他国に左右されない事が非常に重要ではないか。他国の大きな数値目標は、一見すると優れているように思ってしまうが、各国の数値はそれぞれ独自の事情や背景に従って決められたものであるため、それらに拘る必要はない。
  • 政策を進めていくうえで、一定の柔軟性としたたかさが必要ではないか。勿論、一度コミットしたことは極力守る必要がある。しかし、ドイツが2020年までのCO2削減目標を諦めたように、達成不可能なら不可能と割り切ることも選択肢として持っておくべきである。しかも、ドイツは環境大国のイメージに変わりはなく、非常にしたたか。
  • エネルギー政策には、国民の理解も求められる。福島の原子力発電所の事故により、政策が全転換するのではなく、他国でも進められているように、原子力発電の必要性について、しっかりと国民理解を情勢していくことが極めて重要。

(発表の様子。熱心にメモを取る参加者も)

 最後に、山本所長から、「日常の業務では、日本のエネルギー・環境政策について、考える機会がないかもしれないが、そのような中で、非常に良く考え抜いて頂いた。エネルギー・環境政策は、唯一の正解のない課題であり、だからこそ皆が頭を悩ませている。今後も、色々なテーマについて、しっかり考えることによって、次の仕事のヒントを得てほしい。このプログラムは、各企業の中ではなかなか得られない、非常に貴重な機会であり、自身の長期的な将来のキャリアに活かせるのではないか。」とのコメントを頂いた。
 2050年という超長期の時間軸で政策を考えるうえで、メーカー、商社、インフラ、ゼネコン、シンクタンク等、多様な企業で、多様な業務に従事する、中堅社員たちが集まって議論する意義は大きい。関西経済連合会 地球環境・エネルギー委員会では、得られた意見を、今後の政策提言に活かしていく予定であり、今後の同プログラムの展開に大いに期待したい。