ウォーレン・バフェット vs 太陽光発電事業者

太陽光発電設備保有の需要家に有利な制度へ疑問


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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太陽光事業者も去ったネバダ州

 今年1月から適用が決まった新制度は、ネットメータリング制度を根本的に見直したものだった。見直しの内容はの通りだが、2020年に向けて段階的に太陽光発電設備保有者が支払う基本料金は引き上げられ、買い取り価格は引き下げられることになっている。買い取りを保障していた制度が設備償却期間の途中で見直されるため、太陽光発電設備の設置者が受ける影響は大きい。

表 米ネバダ州の制度見直し ※太陽光発電事業者への適用価格

表 米ネバダ州の制度見直し
※太陽光発電事業者への適用価格

 対象となる太陽光発電設備の保有者は、南部ネバダパワーの管内で1万4832需要家、北部のシーラー・パシフィック管内で2432需要家。両電力ともNVエナジーの傘下の会社である。管内の総需要家数は70万だ。
 ネットメータリング制度の見直しを主張していたグループは、太陽光発電の1需要家が受け取っていた「補助金」相当額は、南部で年間623ドル(6.9万円)、北部では471ドル(5.2万円)としている。ネバダ州政府の委員会も全体では1600万ドル(18億円)の補助金に相当すると判断した。
 一方、反対派は金額以外にも、太陽光発電は気候変動問題に貢献するなど多くのメリットがあると訴え、新制度の適用を中断すべく訴訟を起こしたが、今年3月に地裁で退けられた。
 太陽光事業者などは5月下旬、太陽光発電は新たに大きな便益を作り出しているとのレポートを発表し、制度の再見直しを訴えているが、米国の多くの州でネットメータリング制度の見直しが行われており、実現の見通しは明るくない。ネバダ州で太陽光発電事業を行っていたソラーシティが州内事業で550人の解雇を発表するなど、雇用への影響も出ている。
 太陽光発電事業者への実質的な補助金の見直しは、ドイツでも行われそうな状況である。ドイツ連邦政府のショイブレ財務相は、太陽光発電事業者が発電する電力に対し1kWh当たり日本円換算2円強の課税を検討中と、5月下旬に報道されている。固定価格買い取り制度により設備を導入した事業者に対しては、買い取り価格の実質的な減額になる制度である。導入されれば、ドイツの太陽光発電事業が大きな影響を受けることは避けられない。
 今年の太陽光発電設備の導入量は、2015年比で20%程度伸びるとの予想もあるが、太陽光発電事業者には逆風が続くことになりそうだ。