第10話「オーストリア・ハンガリー原子力事情」


在ウィーン国際機関日本政府代表部 公使

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5.G7議長国日本とIAEA

 本年は日本がG7議長国を務める年である。
 4月10〜11日には広島でG7外相会合が開催された。岸田文雄外務大臣のイニシアティブにより、軍縮・不拡散分野は主要課題として取り上げられ、「核軍縮及び不拡散に関するG7外相広島宣言」と「不拡散及び軍縮に関するG7声明」の二つの文書が発出された。昨年のNPT運用検討会議が成果文書不採択という結果に終わって以来、停滞気味の軍縮・不拡散分野における国際社会の取り組みに再びモメンタムを与える上で、重要な成果となったといえる。

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G7外相による平和記念資料館訪問及び原爆死没者慰霊碑献花(写真出典:外務省ホームページ)

 このG7外相会合の成果文書では、「核の番人」であり、「平和と開発のための原子力(Atoms for Peace and Development)」の担い手でもあるIAEAの役割の重要性についても取り上げられている。
 G7外相会合後の4月25日に日本を訪れた天野IAEA事務局長は岸田外務大臣と会談し、核セキュリティやイランの核合意の実施、北朝鮮の核問題、原子力の平和的利用などIAEAが取り組む様々な課題について意見交換を行った。岸田外務大臣からは、一連のIAEAの取り組みを高く評価し、日本として緊密に連携していきたい旨述べるとともに、今回は特に、IAEAが開発課題に取り組む上で重要な拠点となる原子力応用研究所の改修計画への追加支援200万ユーロを表明したところである。

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岸田外務大臣と天野事務局長(写真出典:外務省ホームページ)

 第1話でも述べたとおり。原子力の持つ正と負の両面をどの国よりも知る立場にある日本こそは、軍縮、不拡散、原子力の平和的利用の各分野において国際社会に貢献していく責務がある。その責務を果たしていく上で、IAEAは日本にとって重要なパートナーである。日本がG7議長国を務め、IAEA憲章採択から60周年となる本年は、日本とIAEAとのパートナーシップを強化していく上で重要な年になるであろう。

(※本文中意見に係る部分は執筆者の個人的見解である。)

【参考資料】

ツヴェンテンドルフ原子力発電所関連
http://www.zwentendorf.com/englisch/index.asp(公式ウェブサイト)
ハンガリー原子力施設関連
(パクシュ原子力発電所)
http://www.atomeromu.hu/en/Lapok/default.aspx(公式ウェブサイト)
(放射性廃棄物処理機構)
http://www.rhk.hu/en(公式ウェブサイト)
核セキュリティ・サミット関連
「第4回米国核セキュリティ・サミット」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/dns/n_s_ne/page25_000349.html(外務省ウェブサイト)
http://www.nss2016.org(公式ウェブサイト)
G7外相広島会合関連
「G7外相広島会合」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/ms/is_s/page24_000565.html(外務省ウェブサイト)
「核軍縮及び不拡散に関するG7外相広島宣言」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000147441.pdf(同)
「不拡散及び軍縮に関するG7外相声明」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000147445.pdf(同)
天野IAEA事務局長の訪日関連
「岸田外務大臣と天野国際原子力機関事務局長との会談」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_003246.html(外務省ウェブサイト)
「IAEA原子力応用研究所の改修(ReNuAL)プロジェクトに対する日本の追加的貢献」
http://www.vie-mission.emb-japan.go.jp/itpr_ja/renual_ja.html(在ウィーン国際機関日本政府代表部ウェブサイト)
“Japan Pledges Further 2 Million Euros in Support of IAEA Laboratory Modernisation”
https://www.iaea.org/newscenter/news/japan-pledges-further-2-million-euros-in-support-of-iaea-laboratory-modernisation(IAEAウェブサイト)

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