わが国の中長期的(~2050年)電源構成の在り方

- 自由化のリスク低減、3つの60% -


エネルギーシンクタンク株式会社 代表

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iv.
LNGは800万KWhと小さい。現状50~60%を占め福島第一事故後主力電源であるが、市場経済下での価格変動が大きく且つ現状足元を見られ18$/mbtuとJapanプレミアムが付くなどわが国及びアジア諸国にとって決して安い燃料資源ではない。
発電コストはIEA推定では将来的にも米国のガス代4$/mbtuと日本の12$/mbtu(輸送費8$/mbtuを加算)注4)の差は必然的にあり利用を限定する。また資源的に限定されており、中東情勢、ホルムズ海峡、南シナ海などシーレーン確保に危惧の面が大きくエネルギー安全保障の点からも現状は異常であり、今後順次原発稼働と併せ縮小する。
2050年時点で10~20%程度が適切と推察される。なお発電プラントの技術レベルは世界的レベルにあり今後輸出は期待される。
v.
原子力発電は2400万KWh程度と福島第一事故前の2800万KWhより縮原発である。今後停止中の既設炉の新たな安全確認を経て順次稼働が期待される。加えて40年の寿命を迎えた原発の廃炉と共に、安全性が高い新鋭の原発の建設が望まれる。なお安全確保が大前提であり特徴に記した事業者の努力と政府による各種制度の整備により、安全な稼働が達成されたか否かの実績に応じて計画の見直しを図る。また高レベル廃棄物(HLW)処分問題は先に記したようにFFRにより大幅に軽減が可能である。
vi.
REは種々あるが、それぞれの特性と活かした役割を果たす。大きな枠取りは、

水力10~12%(800~1000億KWh)
現状とほぼ同程度で、今後大型水力発電所の新規建設は困難であり、小型の水力発電の普及に努める。
バイオマス5~8%(400~600億KWh)
わが国は森林大国であるが、木質系バイオマスの普及は遅れている。木質系バイオマスのポテンシャル400~500億KWhに加えて家畜等のふん尿利用などで合計600億KWh程度は期待される。従来高いと言われてきたが先に記した様に機械の導入、林道の整備等により20円/KWh以下が期待される。
PVと風力10~15%(800~1200億KWh)
現状PVの設置の枠取りをした容量は7000万KWeと報じられている。この設備による稼働率が年間平均1250時間であり、発電量は年間約800万KWhに相当する。この内幾らかは先に記した42円/KWhの権利確保の可能性がある。今後Gridの整備、土地の有効利用性など評価を経て20~30年掛け順次設置する。また風力は適地が限定されているが順次整備する。
一方PVの発電コストが大幅に(例えば政府計画の14円/KWh)低下する場合には先に記述したように輸送用エネルギー源として用いる方向も十分考えられる。
地熱と潮力数%(100~200億KWh)
現状では少数であり、適地が少ないが地熱の場合には規制との関係で小型(1000~5000KWe)を中心に100~200億KWh程度の可能性は大きい。潮流発電は今後の技術開発次第である。
vii.
経済性
福島第一事故後の原発停止に伴い産業用・家庭用ともに2~3割程度負担が増えている。代替発電としてLNGが多用され電気代を押し上げたのみならず貿易収支の赤字化を恒常的な体質に変え円安に導いた。
このLNG多用により発電単価は平均概ね10円程度から14円程度に上昇。
将来的には、表-1の構成比率とすればPV,風力シェアを10~20%程度で、国際市場での価格変動および地政学的リスクの大きなLNGのシェアを抑えることにより、現時点とさほど大きく上昇するとは予見されない。
viii.
CO2排出削減について(表-2参照)
環境問題はエネルギー構成を考えるうえでの重要な因子である。しかしわが国の世界におけるCO2排出量は3%程度に過ぎず今後益々小さくなる。またGDP当たりのCO2排出量は先進国中平均の3/4で優等生である。今後ともCO2排出量削減に努める必要はあるが、過度な削減の必要性は少ない。また石炭火力の利をCO2排出量の点から嫌う面があるが石炭火力と原子力の組み合わせでは平均CO2排出量は天然ガス並である。その一方価格、供給の安定性は非常に高い。加え低コストのCO2排出回収技術・貯留(CCS)が進歩しつつありこの技術の適用により将来CO2問題はかなり軽減化される可能性が見込まれる。
わが国のCO2削減努力以上に石炭火力、CCS技術、原子力技術などを今後発電量の増加するアジア地域と連携し活用しCO2排出量削減の道をとる方が世界のCO2排出量削減への貢献度合いは大きい。

表-2 CO2排出量各国比較

6.纏め

 電力価格は経済成長と国民生活の基盤であり低廉・安定が求められる。わが国は、自由化と言う市場経済の場に乗り出すが、この本旨を間違えず制度設計をする事が肝要である。いたずらに時流、海外の流れに惑わされることなくわが国の特性を踏まえた制度と現実的対応が望まれる。

注4)
IEA首席エコノミスト/国際エネルギー局長ファティ・ビロール氏講演談

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