今後電気料金が上がる3つの理由


国際環境経済研究所理事・主席研究員

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電力自由化で料金引き下げ効果はあるか

 東日本大震災をきっかけに、政府は電力システム改革の議論を進めており、昨年11月に成立した改正電気事業法によって、今後のシステム改革の方向性やスケジュールが示された。電力システム改革の目的は、①安定供給の確保、②電気料金の最大限の抑制、③電気利用の選択肢や企業の事業機会の拡大の3点とされる。この2点目について「電気料金が安くなる」と理解してしまっている消費者が多いが、「最大限の抑制」という表現は電気代が上がる可能性を否定するものではない。
 「電力自由化」とは、電気料金の低廉化を目的として、料金規制を撤廃し、料金の決定を市場に任せることで資源配分の効率化を図る仕組みに移行することを意味する。その結果、消費者に電力会社やメニュー選択の自由を与える一方、電力会社にも顧客選択や料金設定の自由を与えるが、導入の目的である電気料金引き下げ効果が実際に見られるのか、検証する必要がある。
 経済産業省の委託により、一般財団法人日本エネルギー経済研究所が「諸外国における電力自由化等による電気料金への影響調査報告書(以下、報告書)」を提出している。その中にあるドイツの事例を参照したい。自由化が電気料金にもたらした影響を計測する場合、単純に自由化後の電気料金の推移を観察するだけでは不十分である。燃料費の変動の影響、税金や補助金、再生可能エネルギー賦課金など政策による影響、自由化後も規制料金であり競争とは基本的に関係ないネットワーク料金の変動の影響などを補正して比較する必要がある。この分析を行うために、電気料金(家庭用)の内訳を分類し、経年の変化を追ったのが下記の表である。