系統接続がオプションに


YSエネルギー・リサーチ 代表

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 ロッキーマウンテン研究所が公表している小論文の中に、建物には系統からの配電線が必ず接続されるのではなく、電力消費者にとってオプションになる時代がそれほど遠くないという内容のものがあった(The Economics of Grid Defection)。その説明によれば、太陽光発電と蓄電池のコストが急速に下がっていることと、デマンドレスポンスや建物や電気機器の効率化が進むなどで個別消費者の電力消費量が下がるために、必要な電力を全て自前の設備で賄うコストが、電力供給事業者(ユーティリティ)の系統から買う電力の小売料金コストより低くなるからだという。コストだけではなく、供給の安定性や電力の品質も系統とほぼ同じになるということもその根拠となる。そして、家庭用よりも業務用の分野でこの傾向は早く進むとしている。
 系統からの電気料金と、太陽光発電と蓄電池の組み合わせによる発電コストが同じになるのはグリッドパリティー(再生可能エネルギーによる発電コストまたは価格を系統電力と比較したときに同等かそれ以下になること)と言われるが、発電用燃料を全て外部から持ち込んでいるハワイ州に於いては既に一部でこれが現実になっていると分析し、ニューヨークでは2025年、カリフォルニアで2031年、ケンタッキーやテキサスで2047年頃にはそうなると結論づけている。これからの電気料金上昇を控え目に見ても、2020年あるいは2030年頃までに、各州の電力事業者(ユーティリティー)から電気を買わなくなる消費者が数多く出るようになるということだ。米国南西部地域全体では、太陽光発電と蓄電池の組み合わせのコストダウンを緩やかに見た場合でも、2024年には、電力事業者の総販売電力量の5分の一がコスト競争力を失うと予測している。