低炭素社会実行計画(日本製紙連合会)


Japan Paper Association

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2020年度までのCO2削減目標と温暖対化策技術

 2020年度までの削減目標について、2020年度の全国生産量を2,813万トンとすると、2020年度BAU比139万t- CO2削減することを目指すものである。この量は、一般的な省エネルギー投資の他に、①廃材、廃棄物等利用技術、②高効率古紙パルパー、③高温高圧回収ボイラーの3本柱を想定している。中でも効果の大きい燃料転換を進め、林地残材を始めとするバイオマス燃料の供給がより拡大されるならば、さらに深堀りすることは可能である。
 ①は、代替エネルギー源として廃材、バーク、廃棄物等を利用し、化石エネルギー使用量を削減する。特に林地残材の集荷、運搬等のシステムが確立できれば、使用量の増大が可能となる。②の高効率古紙パルパーは、古紙パルプ工程において、古紙と水の攪拌・古紙の離解を従来型よりも効率的に進めるパルパーを導入し、稼働エネルギー使用量を削減するものである。省エネ法改正や電力単価上昇が必至であることから、省エネ対策は今後とも持続的に進めていくことが必要である。③の高温高圧回収ボイラーは、濃縮した黒液(パルプ廃液)を噴射燃焼して蒸気を発生させる単胴ボイラー(黒液回収ボイラー)で従来型よりも高温高圧型で効率が高いものを追加導入するものである。


森林吸収源目標

 もう1つ当業界の特徴である吸収源の目標については、2020年度までに所有または管理する国内外の植林地の面積を、1990年度比で52.5万ha増の80万haとすることを目標とする。これによって、製紙業界が所有または管理する国内外の植林地のCO2蓄積量は、1990年度比で1億1,200万t- CO2増の1億4,900万トンとなり、この間のCO2の吸収量は年平均で370万t- CO2となる。なお、製紙業界が国内において所有または管理している19万5千haの天然林のCO2蓄積量を加えると、1990年度比で1億2,900万t- CO2増の1億9,600万トンとなり、この間のCO2の吸収量は年平均で430万t- CO2となる。工場で実施してきている省エネ努力の2倍以上を、吸収で貢献出来ることになる。
 わが国の製紙企業が海外で行っている産業植林は1990年代に本格化し、無立木地において造成されていることからCO2吸収源としての機能は大きいものがあり、国際貢献と見ることも出来る。京都議定書の枠組みにおいては、民間企業の植林地のCO2吸収クレジットを政府レベルで正式に承認する仕組みとしては、植林CDMしか認められていないことに加えて、承認プロセスが厳格なため殆ど進展が見られていない状況となっている。一方で、環境省のJ-VERを始めとするいくつかの取組は国内の森林を対象としており、海外の植林地を想定したものはないため、海外で積極的に取組んでいる製紙業界としては、わが国の民間企業による海外植林地の吸収クレジットを評価・認証する仕組みが必要であるとの考えから、「海外植林地CO2吸収・蓄積量評価・認証システムの構築」を外部機関に委託し、業界関係者に加えて学識関係者及び行政関係者にも参加してもらい、CO2吸収・蓄積量算定マニュアルを作成した上で、CO2吸収・蓄積量評価システムの海外での実証を終え、評価認証システムは運用を開始している。
 現時点では、海外植林地での炭素蓄積量及びCO2吸収量の客観的な数値のみであり、CSRや環境報告書において活用する事はできても、クレジットとして使用する事は出来なかったため、今後は、国内のJ-VER制度及びVCS(国際排出権取引協会(IETA))、「持続可能な発展のための経済人会議」(WBCSD)、国際的なNGO(非政府組織)の「クライメート・グループ」が定めたカーボンオフセットの自主基準)等諸外国の制度との整合性を図りながら、現状のシステムを発展させ、カーボンクレジット化を可能にするための制度設計を行うべく検討を行っている。


他部門との連携

 他部門との連携については、1つ目として省資源化につながる古紙利用の推進、2つ目は廃棄物処理の拡大が挙げられる。特に再生可能エネルギー及び廃棄物エネルギーの利用拡大に伴って、焼却灰が増加する一方で、焼却灰の有効利用先が減少していることから、最終処分場の延命等の循環型社会構築だけではなく、地球温暖化対策にも貢献することとなり、そのため有効利用先の拡大対策が不可欠となることから、公共財への再生資材の優先的使用やグリーン購入法の活用等、受け皿の整備に政府ともども関係業界が力を合わせることが必要となってくるものと思われる。

革新技術の開発

 革新技術の開発では、これまでも燃料転換として化石エネルギーの使用量を削減することに大いに寄与してきた廃材、廃棄物等利用技術として林地残材の合理的な集荷・システムを確立する必要があるものと思われる。さらに、長期的には、廃棄物、バイオマスの燃料用途等の活用だけに止まらず、木質系バイオマスからバイオエタノール等の液体燃料を生産する技術開発を検討していくこととなろう。

紙製品の軽量化によるライフサイクルでの温暖化対策への貢献

 環境負荷や物流コストの低減に紙製品の軽量化が貢献するものと考えられる。強度を落とさずに面積当たりの軽量化を進めることで製造エネルギー原単位は悪化するが、紙資源の節約と、輸送工程でのCO2削減につながるものである。わが国ではユーザーのコスト削減を目的とした要請により、製造エネルギー原単位の悪化を抑えつつ新聞用紙をはじめ段ボール原紙などの軽量化を進めているが、海外においても紙製品の軽量化が進めば輸送段階をはじめとした使用段階での地球全体のCO2削減につながるだけでなく、紙資源の節約により地球温暖化対策に貢献することになるものと思われる。

削減達成状況の確認と対策

 削減目標に対する達成状況の確認を2016年頃に実施し、その状況と今後の対策を会員会社で共有することとしている。特に、再生可能エネルギー固定価格買取制度によって、紙パルプ業界が利用してきたバイオマス資源が原料から発電用に流れる懸念があることから、その影響を見極める必要があるものと思われる。目標達成が困難な状況であれば、省エネ対策、燃料転換対策等の積み上げを検討する予定である。

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