再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の見直しは可能か


Policy study group for electric power industry reform

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 これを改善するため調達量や調達価格を前もって固定せず、価格に応じて調達量を変化させる方法として、再エネからの長期の買電契約(PPA)の締結のために、売り手と買い手の双方が価格をつけあうダブルオークションを考えてみる。

買い入札:あらかじめ右下がりの需要曲線を考えてこれを買い手の入札曲線とする。
売り入札:売り手(再エネ発電事業者)側が設備容量(kW)・売電価格を応札する。

 この入札を毎年おこなって、その結果によって調達量(kW)、調達価格(\/kWh)を決定し、落札した再エネ事業者と電力会社(または送電系統会社)の間でPPAを締結するのである。買取期間中(15年~20年)の買取価格は入札で決定した調達価格に固定される。このプロセスによって決定した価格と電力会社(または送電系統会社)の回避可能原価の差額による負担分は、FIT同様にサーチャージによって回収されるものとする。
 価格決定にダブルオークションを採用するメリットは、

売り手側の競争により再エネ価格の低減が期待できること
再エネ導入量の増加に従って自動的に買取価格が低減されるため、国民負担を一定範囲に抑制しながら再エネの導入を進められること
従来のFITやRPSと同様に、電力会社(または送電系統会社)が再エネ事業者から長期相対契約によって再エネの電気を購入するため、再エネ事業者の資金調達が容易となることと想定されること
FITでは随時、系統連系の申し込みがなされ、連系希望地点のバッティングが生じれば先着優先で接続されるが、年間1回のオークションとすれば系統増強コストも含めて最適な再エネを選定できる。また多数の再エネを一括して送電する合理的な系統増強プランを策定できる

などがあげられる。一方で買い手側の入札曲線の決め方が問題になってくる。

 図2は太陽光発電の発電コストの「学習曲線」の例であり、導入拡大にしたがって発電コストがどのように低下するかを、累積生産量に対して概ねコスト対数的に低下するという前提で推計したものである。需要曲線を設定する際には、この価格見通しの学習曲線を参考にすることが考えられる。

図2 学習曲線による再生可能エネルギー(太陽光発電)の発電コスト見通しの例[3]

 つまり学習曲線の左側から前年度入札までの落札分(累積導入量)を取り除いて、当該年度の新規購入の入札曲線にするのである(図3)。この場合に入札の上限価格は前年度の買取価格になる。このような仕組みにより、再エネの導入量と価格はあらかじめ設定した学習曲線の上を推移することになる。なお、この例では単純化して太陽光発電のみを考えているが、再エネの種類毎に学習曲線が異なるので、その違いの扱い方は課題となる。

図3 学習曲線を利用したダブルオークションによる価格設定

 これにより再エネ普及が進んでも、国民負担の総額はあらかじめ想定した一定額を超えることはない。なおこの制度上では、再エネの導入拡大や価格低下がどの程度早く進むかは、競争や技術革新などによる価格低下次第である。早期に価格低下が進む場合にはこの学習曲線の上を速いペースで導入が進んで政策的な助成が不要となり、他方、学習曲線における価格低下の見込みに無理があった場合には導入が停滞することになる。逆に言えば、当初の見通し通りにコストが低下しないにも関わらず、再エネの普及が進んで国民負担が増大することを避けることができる。

4.今後の課題

 再生可能エネルギー導入拡大に関わる負担の軽減策としてFITを改善する一つの試案を提示したが今後議論すべき課題も多い。例えば以下のような課題が考えられるだろう。

再エネの種類毎にオークションを行うのか、まとめてオークションを行うのか
すべての再エネをまとめてオークションする場合、買い手側の需要曲線をどのように決めるのか
検討する機関や前提によって学習曲線は複数存在するが、これらの中からどのように適正な需要曲線を定めるのか

 試案に多くの課題はあるものの、将来の国民負担の総額を提示しながら、再エネの導入を拡大していく(あるいは一定以上の負担となるならば省エネルギーなど代替技術を推進する)ことが本来望ましいのではないだろうか。今後の活発な議論を期待したい。

<参考文献>
 
[1]
澤 昭裕ブログ:「再生可能エネルギーは本当にコストダウンするか?
[2]
“Chancellor Merkel Outlines Aspects of Reform of Renewable Energy Sources Act,” German Energy Blog, http://www.germanenergyblog.de/?p=13317
[3]
朝野賢司:「太陽光発電は普及すればコストが下がるのか?」、SERC Discussion Paper SERC09033

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