排水環境の負荷を減らし、そのままでは廃棄物になるものをバイオマス発電燃料に変える“エコリカバ―II”

環境技術事例&インタビュー


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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――エコリカバ―IIの効果が一番期待できるのはどの分野ですか?

国島:厨房以外でも当然油は吸着するし、油脂以外の有機物も吸着すると思いますが、厨房というスケールがベストで、飲食産業の市場がこの材料に合っていると思います。

――将来的な展望はいかがですか?

国島:東京だけでも約50万店の飲食店、全国では約70万店あるでしょうか。エコリカバ―IIを使えば、飲食産業において今まで廃棄物として価値の付かなかったものに価値が付き、それがひとつの市場を形成していくことになります。廃棄物の処理から、エネルギーを作り出すという意識へと変わってきます。オリジン東秀での取り組みから、お店の垣根を超えて広がり、町から都市へ、関東から全国の地域へ広がっていけばと考えています。横浜市が始めようとしているように自治体が小さなグループを形成してモデルを作り、普及拡大を図るのも一案です。

細川:この取り組みで、本来の最大の受益者は誰かというと、国民ではないでしょうか。飲食産業からの廃水が現状のままでは、下水処理に負荷がかかります。下水処理は公的な機関ですから、地方自治体に負担が大きくかかってきます。それを発生源のところで、きちんと処理することで、社会的負荷も少なくなってきます。お金が足りない我が国で公的負担をどれだけ少なくするか、無理のないこうした形で広げていくと、社会全体のコストが大きく下がる可能性があります。文化国家の最大の問題点は末端処理をどうするかです。我々は、環境、また社会に対する負荷が少ない仕組みづくりに寄与すると自負しています。

エコリカバ―IIの導入コスト

――エコリカバ―IIを導入する際にかかるコストはどれくらいですか?

細川:量によって違いますが、1か月分は30日分として30袋で7000円です。通常1袋100gで1㎏まで油を吸い取ります。

国島:グリーストラップ清掃の従来のやり方では、水を含むため、だいたい1回あたり5㎏の廃棄物が出ます。この5㎏に油が通常1割程度の500gほど含まれていると考えてください。これが毎日積み重なり、廃棄物処理代もかさんできます。一方、エコリカバ―IIは50gで10倍の500g程度まで油を吸い取ることができます。この差は歴然でしょう。清掃時間が1時間かかっていたものが、2分の1から4分の1の時間で済むようになるのが実績です。その時間単価が毎日積み上がれば、これもプラスの要素だと思います。

 また、廃棄物として出すとお金がかかりますが、これは燃料として認められています。つまり逆にお金が戻ってきますから、それも足し算すると、排出に今までかかっていた費用がずいぶん削減されます。廃棄物の量は減る、清掃時間も減る、さらに価値としてお金が戻ってくるという組み合わせが成立します。

――メリットはたしかに大きいと思われます。

細川:仮に企業の廃棄物処理コストが月々7000円だとして、エコリカバーIIで月々7000円コストがかかったとしても、オペレーションは楽になり、時間は短縮される。職場環境が改善され、従業員の定着率も上がる可能性もあります。回収物は燃料になります。燃焼(発電)に伴う炭酸ガスはカーボンニュートラル、公共下水の処理負担は減少、全体のシステムとしてデメリットはまったく見あたりません。

【後記】
 再生可能エネルギー回収材「エコリカバ―II」は、大がかりな設備を必要とせず、下水や廃液に添加するだけで元来廃棄物だったものを有価物に変え、廃水を下水に流せるキレイな水にします。環境技術というと、イノベーションを連想しますが、一見このようにシンプルな技術が環境負荷の低減に大きく貢献する可能性があることは、新たな発見でした。既存の技術にひとひねりの工夫を加えて新しい製品にし、その製品(エコプロダクツ)が廃棄物を減らし、再生可能エネルギー燃料になり、温室効果ガスの削減に貢献する。エコリカバーIIは、自然から学び、自然と共生する技術の可能性を改めて感じさせてくれました。

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