第8回 JX日鉱日石エネルギー株式会社 常務執行役員 新エネルギーシステム本部副本部長 山口益弘氏

“エネルギー変換企業”として、多様なエネルギーの供給に貢献


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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――石油会社が水素エネルギーを供給するわけですね。

山口:製油所で石油製品をつくる過程で、原油に含まれる硫黄分を除去する「脱硫」という作業を行っていますが、この脱硫に大量の水素を必要とするため、水素を自前で製造する設備を持っています。我々は水素技術に長けており、そういった技術もベースにしながら、お客様に対する水素供給拠点をつくることは可能です。

 また、新型エネファームのSOFC(固体酸化物形燃料電池)にしてもPEFC(固体高分子形燃料電池)にしても、そのまま水素を直接燃料にできれば、2030年頃には、クーラーの室外機より小さくなるかもしれません。

――水素が社会に加わってくるのですね。

山口:ガソリンスタンドは今までガソリン、軽油、灯油を売っていましたが、それだけではなく、電気、水素まで供給するようになりますので、「ガソリンスタンドのハイブリッド化」になるでしょう。

――ハイブリッド化計画は、2015~6年だとすると、あっという間に実現しそうですね。

山口:あっという間ですよ。燃料電池の技術について、日本は世界一です。この世界一の技術を日本で開花させてゆかねばなりません。この様な意味から、ここ数年が非常に大事な年だと思っています。

太陽光発電と燃料電池のダブル発電でカーボンオフセット

――ENEOSは、太陽光を中心とした再生可能エネルギーにも理解があるという印象です。

山口:私自身も、太陽光発電余剰電力買取制度の「買取制度小委員会」の委員を務めました。LPガスにしても都市ガスにしても燃料電池を使うことは、化石燃料を使っているため、やはりCO2を出してしまいます。ところが太陽光パネルを取り付けることにより、太陽光はほとんどCO2を排出しませんので、その電力を系統から買ったとみなせば、その分マイナスの効果があるわけです。太陽光が発電した分でCO2が減っていますから、燃料電池とオフセットできる。太陽光発電と燃料電池のダブル発電はCO2ゼロに近く、地球環境に配慮したエネルギー供給システムとして、我々がお薦めしているものです。

――これからはエネルギー事業者の境目がどんどんなくなっていきそうですね。

山口:私どもの会社は、「エネルギー変換企業」なのです。

――「エネルギー変換企業」ですか?

山口:お客様がガソリンを欲しいと言われたら、ガソリンを原油から作ってお渡しします。別のお客様が、水素が欲しいと言ったら水素をつくってお渡しするでしょう。いろんな原料がある中で私どもはお客様のニーズやソリューションに合わせて、欲しいものを欲しい時に、適正な価格で安定的に供給していく「エネルギー変換企業」だと考えています。

――ユーザーに対して提案できるオプションをたくさん用意するわけですね。

山口:全くおっしゃる通りです。ある人がソーラーを欲しいという時に、石油会社だからといって「ソーラーはやめたほうがいいですよ」と言うわけにはいきません(笑)。むしろ“ソーラーを入れて燃料電池を入れるとカーボンオフセットでき、またベースロードにもなるし、とてもいいですよ”といったお話をさせていただいています。