ドイツの電力事情⑦ 電気料金の逆進性―低所得層への打撃―


国際環境経済研究所理事・主席研究員

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 そして我が国の電気料金上昇要因には、昨年7月に導入された再生可能エネルギー全量固定価格買取制度(FIT)と、原子力発電所を停止させていることによる燃料費の増の2つの要素があることにも注意が必要だ。
 まず、再生可能エネルギー全量固定価格買取制度による負担であるが、2012年は月70〜100円程度(標準家庭)と試算されている。(経済産業省調達価格等算定委員会(2012/4/27))この金額であれば大きな負担ではないと思えるが、全量固定価格買取制度の仕組みから明らかな通り、導入量が増加するにつれて負担額は増加していく。普及による太陽光発電設備価格低下効果も期待されるが、バランスの取れた買取価格を設定することは非常に難しく、また、市場により決定する太陽光発電設備の価格は日々変化するのに対して、買取価格は法改正を伴うためどうしてもタイミングのずれは生じる(図2)。

ドイツやスペインなど諸外国では、国民負担の増大を招く結果となったことはこれまでも指摘している通りだ(図3)。

日本での買取価格は諸外国に比べて非常に高く設定されており(図4)、早急に価格見直しを行う必要がある。エネルギー自給率の低い日本において再生可能エネルギーの導入拡大を図っていく必要性は論を俟たないが、ドイツの電力事情②でも指摘した通り、FITは適切な運用が非常に難しく、また、現在ある技術の普及を促す力はあっても技術開発を促進する力は非常に弱いと言わざるを得ないことを改めて指摘しておきたい。