第6回 東京ガス株式会社 エネルギー企画部 スマートエネルギーネットワーク推進プロジェクト室 室長 菱沼祐一氏

コージェネが核となるスマートエネルギーネットワークの挑戦


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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――実証現場ではコージェネ、太陽光発電、太陽熱、冷温水機による消費などの推移がわかりやすく「見える化」されていました。季節や天候により、エネルギーのベストミックスの割合は変わりますか?

菱沼:はい。当然ながら再生可能エネルギーだけで電力や熱を供給するとなると、とてつもなく大きな面積の太陽熱や太陽光などの設備が必要になります。街中でそれだけの面積を取ることは不可能ですし、必ずそれをバックアップする電源も必要になります。

 コージェネは幸い熱も電気も出しますので、太陽光・太陽熱の不足分をコージェネの電気と熱で補完することができます。足りない部分は系統から電力を買うなり、都市ガスを使うようにする。大事なことは、再生可能エネルギーを優先的に使い、次にコージェネの廃熱や電気を、次いで一般の電気や都市ガスを使っていくというように、プライオリティをつけて制御することで大きな省エネ効果を生むことができるようになります。

――今後は発電事業への展開が広がりそうですね。

菱沼:東京ガスの「チャレンジ2020年ビジョン」では、コージェネを150万kWから400万kWに拡大し、ガス空調は400万冷凍トンから570万冷凍トンに増やす目標を立てています。電力事業は、現在は200万kWですが、これを300~500万kWに増やす計画です。分散型のコージェネやガス空調は節電に貢献し、一方では上流側の電力需要も手を拡げていくといった計画です。

 お客様が求めているのは、自分たちのライフスタイルに合ったエネルギー供給を受けることだと思っています。その視点に立てば、今後自由化が進むにつれて、電気とガスの垣根はますます低くなっていくでしょう。お客様にとってベストなエネルギーを供給していくことが当社のスタンスです。

スマエネの商用プラントの計画も進む

――今後は実証段階を経て、実用フェーズに移り、将来的には商業ベースに移っていかれるのだと思いますが、どのような計画でしょうか?

菱沼:最初の商用プラントとしては田町東口北地区プロジェクトがあります。港区、愛育病院、エネルギーアドバンス、東京ガス等が官民連携し、エネルギーの面的や未利用エネルギー等の活用を行ったスマートエネルギーネットワークを構築し、環境性と防災性に優れた複合市街地を形成する計画の中で進めています。これから2回に分けて工事を行いますが、第1プラント(供給対象延床面積約9万㎡)の稼働は平成26年4月頃を予定しています。

 続いて豊洲埠頭地区プロジェクト(東京ガスグループ開発規模:約20ha)では、再生可能エネルギーや、コージェネを導入し、熱と電気の面的融通によって省エネ・省CO2を図るとともに、地域のエネルギーセキュリティを高めることを目的とした商用プラントを作る計画です。

――まもなく商用プラントもできるのですね。

菱沼:設計は着々と進んでおりまして、今後はこの千住の試験設備で得た制御などのさまざまなノウハウを、実証用プラントに活用していこうと考えています。