第6回 東京ガス株式会社 エネルギー企画部 スマートエネルギーネットワーク推進プロジェクト室 室長 菱沼祐一氏

コージェネが核となるスマートエネルギーネットワークの挑戦


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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――コージェネレーションシステムを実際拝見し、まず想像以上にコンパクトな設備であることに驚きました。

ガスエンジンコージェネレーション370kW 屋上に設置された太陽光パネル
(千住テクノステーション)

菱沼:今日見て頂いた370kwのエンジンを設置した基礎の部分に、以前は100kwの発電装置を設置していました。ガスエンジンは、同じ排気量で大きな馬力、つまり発電出力を出せるように、高出力化を進めています。コンパクトで高出力のエンジンにすると燃費も良くなり効率も良くなります。ガスエンジンは20年前までは発電効率30%程度でしたが、今では40~50%程度まで改善されています。しかも出力レンジは小さなものは家庭用の1kwから大型のものは産業用の8000kw程度と、バリエーションが広がっています。

――音も思った以上に気になりませんね。

菱沼:音については、エンクロジャー、つまり防音のパッケージをしています。工場の中でエンジン、発電機などの中身をぎゅっと箱に詰めて、騒音も閉じ込め、すべてコンパクトに箱の中に収めています。コージェネレーション・パッケージと呼んでいますが、これにより低コスト化も図れます。

再生可能エネルギーの普及を支えるコージェネの役割

――コージェネレーションには、再生可能エネルギーの普及を支える役目としての期待もあります。

菱沼:再生可能エネルギーは天候により変動する不安定なエネルギーです。電力供給サイドが大きく振れるので、コージェネを使って需給調整するという考え方があります。また電気だけではなく、例えば冷房の部分のガス空調と電気空調の使い分けで、電力の需給を助けることもできます。

 例えば、よく晴れて再生可能エネルギーによる電気が余ったときには、コージェネを止めればいいわけです。そしてターボ冷凍機などの、電気空調熱源機で冷房を行う。逆に雨の日で再生可能エネルギー電気が不足した時にはコージェネで発電して、その熱を吸収式冷凍機に持ってきて冷熱を作ることができます。これをハイブリッド熱源システムと呼びますが、コージェネと電気空調、ガス空調をベストミックスすることで、需給調整機能をさらに大きくできます。それをこの千住の実験場で実証しています。

――実証実験の経過はいかがですか?

菱沼:具体的な数値的な目標としては、この国家プロジェクト(経済産業省「分散型エネルギー複合最適化実証事業」)を進めるにあたり、省エネ率12%、CO2削減率34%という目標でしたが、2011年度の結果は、その目標を若干上回り、省エネ率13.6%、CO2削減率35.8%となり、当初の計画通りの数値目標を達成することができました。電気空調・ガス空調の切り替えにより、電気を使うときは積極的に使い、使わないときには逆に電力を系統側に押し上げる、そういったハイブリッド熱源のオペレーションについても作動が確認できております。