核燃料サイクル対策へのアプローチ


国際環境経済研究所前所長

印刷用ページ

動かない現実を前に新しい漸進策が必要

 しかし、「もんじゅ」も六ヶ所再処理工場も順調に稼働しているわけではない。こうした八方ふさがりの状況の中で、漸進的アプローチを取るとするならば、以下のようになろう。

1)高速増殖炉は「増殖」を主としたり、軽水炉並みの競争電源とするような開発目標を立てるのではなく、「高速燃焼炉」開発として、当面「軽水炉が残してしまうプルトニウム等の放射性物質の燃焼による有害度の低減」を主目的とする。

2)再処理工場の意義も、高レベル放射性廃棄物の減容化や潜在的有害度低減に焦点を当てたものとする。(第一)再処理工場は40年稼働が前提であり、たとえ30年代稼働ゼロが実現するとしても、今後約30年程度稼働することが見込まれる原発から発生する使用済み核燃料とこれまで既に発生しているものをトータルに再処理することは不可能。

 したがって、第二再処理工場の建設についての検討を進めること必要となる。しかし、今後原発の新増設が困難になる状況の中では、工場の能力に対する処理量が不足し、高速炉を積極的に進めることにしない限り、回収するプルトニウムの使用先も見込まれなくなるため、経済性を確保することは不可能であり、政府による支援・関与を検討する必要がある。

3)上記の検討に当たっては、使用済み核燃料の発生量、MOX燃料使用可能量、回収プルトニウム量等を正確に把握し、定量的なバランスがどのようになるのか、そして余剰プルトニウムが発生することを避けるためには、どのような条件が必要かについて、関係者にとどまらず、広く国民一般の間で認識を共有する必要がある。いずれにせよ、「原発稼働ゼロ」、「再処理の継続又は直接処分」、「高速炉開発」、は、相互に密接に関連しており、部分的に解決することは極めて難しい。

4)また、中間貯蔵に関しても、今後そのキャパシティ拡大やドライ・キャスクによる保管について、その事業体制を含め、使用済み核燃料対策の一環として検討していくことが必要となる。

 ただし、中間貯蔵を分散的に行う案については、管理主体の分散に伴うリスクの増加や、貯蔵地点の立地問題、ドライ・キャスクの長期健全性に伴う技術的問題などに留意する必要がある。

 その際、再処理事業に関する困難な問題を避けるための時間稼ぎ的な目的で「中間貯蔵」推進が取りざたされるようになっては、問題の先送りにしかならなくなる。その点には、十分な注意が必要である。