第3回 日本鉄鋼連盟 国際環境戦略委員会委員長/新日鐵住金株式会社 環境部上席主幹・地球環境対策室長 岡崎照夫氏

日本は世界最高水準のエネルギー効率をさらに極め、世界に貢献する


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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中国との関係から国際連携の重要性が高まっている

――国際連携は具体的にどのような状況でしょうか?またその実効性についてどう評価されていますか?

岡崎: 二国間・三国間以上・国連レベル、民間同士、官民連携など、さまざまな連携に取り組んでいます。世界の粗鋼生産14~15億トンに対して、中国が6~7億トンを占めています。民間レベルで「日中鉄鋼業環境保全・省エネ先進技術交流会」を2005年7月から始め、毎年開催場所を日中交互に代えながら継続的な連携を図っています。

 2006年4月にはAPP(クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ)のタスクフォース会合が環太平洋7か国で、鉄鋼や電力など8分野での官民連携としてスタートした。この活動は、2011年に終了し、その後、鉄・電力・セメントの3分野はGSEP(エネルギー効率向上に関する国際パートナーシップ)としてスタートし、昨年9月のワシントン準備会合を経て、今年の3月に東京で1回目の会合を開き、2回目は来年の春先の開催に向けて現在、準備をしています。

 民民では、世界鉄鋼協会(WSA)において世界中の鉄鋼業が温暖化問題について国際連携に取り組み、年に2回定例会合を開催してきました。直近では、今年9月にブエノスアイレスで開催されました。世界の鉄鋼の製鉄所ごとの毎年のCO2排出量や排出原単位など2007年以降のデータを蓄積し、世界データベースを作り上げてきたのは、一つの大きな成果です。原単位の算定方法については、従来各国が勝手に計算していましたが、今回の連携の中で、計算方法を統合した。この算定方法のバウンダリー(算定する対象の範囲で、今回の場合は、鉄づくりに必要な個別のプロセスをすべて含めている)等は、自主行動計画のものをベースとしており、日本の鉄鋼業界がISOに対して標準化の提案をし、マジョリティーの賛成を得て、現在ISO化のプロセスにのっている。来年初めには国際標準として成立する見通しで、日本が主導した極めて大きな成果となると思います。

――その他、海外との連携で主だった取り組みはありますか?

岡崎:京都期間の目標達成が厳しかったので、CDM(クリーン開発メカニズム)プロジェクトも手掛けました。国連のCDM理事会に申請し、中国で行う省エネプロジェクトをCDMとして認めてもらい、クレジットを発生させて、それを日本の鉄鋼業が買い上げて目標達成に使おうというものです。

 ところが、現在では省エネはなかなかCDMとして認められません。儲かるような、利得のあるものはダメというわけです。しかし、省エネ技術は設備の初期投資も要りますし、途上国もインセンティブとして欲しいわけです。CDMを補うものとして、我々は「二国間オフセット・クレジット・メカニズム」を現在進めています。

 もう一つは、2020年に向けての低炭素社会実行計画で、その柱の一つが、海外への技術移転・普及で貢献するということです。国際的に認められるMRV・評価計算方法を作ることを進めています。鉄鋼生産は、まだ中国の1/10ですが、粗鋼生産量が直線的に伸びているインドを一番の対象国にしています。

――これほど国際連携が進んでいるとは驚きました。

岡崎:国際連携が重要になっているのは、中国との関係からです。否応なく彼らは資源を大量に消費してしまうし、値段は上がり、資源効率は悪いままです。効率よく生産することは彼らにも我々にもベネフィットがあります。彼らに早めに対処してもらわないと、資源やエネルギーの無駄遣いをされてしまう(資源・エネルギー価格の上昇を招く)。あとは二国間で協力的なセクトラルアプローチをやっていく体制を作るということ。日本鉄鋼連盟では国際環境戦略委員会を何年か前に作り、私は委員長を務めていますが、バイ・マルチの官民連携GSEP、World Steel Assciation(世界鉄鋼協会) 、IEA(国際エネルギー機関)、その他の活動を鉄鋼各社が政府とも連携しながらやっています。