第2回 日本経済団体連合会 資源・エネルギー対策委員会企画部会長 鯉沼晃氏

エネルギー政策は国家戦略の根幹。政府に責任あるエネルギー戦略をゼロから作り直してほしい


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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エネルギー安全保障の観点と、化石燃料高騰による世界への影響

――エネルギーは、国内問題のみならずグローバルな視点で議論することがやはり大切かと思います。経団連としてエネルギー問題と海外戦略の関わりについてお聞かせください。

鯉沼:大きく分けて2つあります。ひとつに日本はエネルギーの自給率はわずか4%であることから、エネルギー安全保障の観点から、国産エネルギーの活用に向けての取組みを真剣に行う必要があります。再生可能エネルギーについても、コストを大きく下げることと効率を高めていくこと、この2つを目的とした技術革新を推進して活用しなくてはいけません。一方で、化石燃料の確保も必要です。そこでは資源外交の切り札として、あるいは交渉のカードとしての多様性を失わないことが重要でしょう。日本近海のメタンハイドレードなどの資源開発については、企業だけではできませんから官民一体で取組むことが大切です。

 2つめに、エネルギー問題を国内問題だけでなくグローバルな視点で考えて、国際的なエネルギー対策に貢献していくことを日本の責務にするという考え方が大切だと思います。

 世界の大半の国は化石燃料に依存しています。フランスのように総発電量に占める割合の75%が原子力発電という国もありますが、大勢としては化石燃料に依存しているのが今の世界の現状です。この中で経済大国の日本が、今、原発を止めてしまうとすると、今でも既に昨年から起こっていることですが、燃料価格が高騰するでしょう。経済大国が値段を上げてしまい、大国でない他の国々に化石燃料購入の費用額がかさみ、迷惑を掛けてしまう事態は避けなければいけません。

 3月29日の経団連とアメリカDOE(エネルギー省)長官の面談の中でも、「日本が原発の再稼働をせず、化石燃料の輸入が増大すると世界の化石燃料市場の動向に大きな打撃を与えるのではないか」というご意見を頂いております。我々だけでなく資源国のアメリカでも、やはりそうした事態を危惧しているわけです。

――日本の原子力政策が世界に大きな影響を与えるということですね。

鯉沼:そうです。また、地球規模でみると、温暖化対策の重要性は変ることはありません。日本は世界の温暖化対策に貢献していく必要がありますが、今回のエネルギー・環境戦略の議論の中では、この温暖化対策の視点での検討、議論というのが極めて弱いと考えています。技術立国を目指す日本としては、環境・エネルギー技術の面で国際的な貢献を推進していく必要がある。我々経団連で行っているような低炭素社会づくりの活動や取り組みを世界規模で行っていく。我々が持つ環境・エネルギー分野の技術で、世界に貢献していくことを明確に打ち出すべきだと考えています。