評価が分かれるテキサス州の電力自由化

-新規参入は活発だが、価格は上昇。最近は輪番停電も


Policy study group for electric power industry reform

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 テキサス州の場合、そもそも一家庭当たりの消費電力量が大きいことが、家庭部門の新規参入が活発な要因と思われる。もともと米国の一家庭当たり消費電力量は、日本の約2倍であるが、テキサス州では更に大きく、日本の家庭のなんと4倍の電力を消費している(図1参照)。テキサスのような自由化をすれば、日本の家庭部門にも同様の新規参入が起こるかといえば、それだけの需要がない分、新規参入者にとっての市場としての魅力(売り上げ、利益率など)が小さいことがハードルとなるだろう。

図1:米国で全面自由化を実施した州の新規参入シェアと一家庭あたり消費電力量の相関
(出典)DOE/EIAを元に作成

電気料金は上昇

 他方、電気料金水準はどうかというと、図2に示したとおり、家庭用電気料金は、燃料価格の上昇もあって2000年から2010年の間に45%の値上がりが生じた。最近はシェールガス増産でガス価格が下がった影響もあり、一時よりも電気料金は下がっているが、ピークの2008年の料金は2000年に比べると60%以上上昇した水準にあった。これについて、値上がりの原因は燃料価格の上昇であり、自由化していなかったらもっと値上がりしていただろうとの主張もあるが、消費者の反応やそれに呼応する政治がどう反応したかによる(他州では、価格形成に介入したり、自由化自体を止めたりする例が生じている)ため、実証は難しい。図2を見ても、2010年のガス価格は2000年時点の水準まで戻っているのに、電気料金水準は高止まりしたままであるので、これを見る限り、自由化は価格高騰を抑制し、下落する際には速やかに下落するはずだというような説は、説得力が十分ではない。(注:ガス火力はERCOT域内の発電電力量の約半分を占める)

図2:テキサス州の家庭用電気料金と天然ガス井戸元価格の推移
(出典)DOE/EIAを元に作成

 以上のとおり、テキサス州の電力自由化は、需要家の選択肢が豊富になったことから成功例と評価する意見がある一方、電気料金が上昇しているから成功とはいえないとの意見もある。自由化の総合的な評価は分かれており、少なくとも手放しで合格点を付けることはできない。