工藤智司氏・日本基幹産業労働組合事務局長に聞く[前編]

震災を経験し、切に感じた日本の強さ


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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震災を経験し、切に感じた日本の本当の強さ

――胸が痛みます。被災地での支援活動も大変ではないでしょうか。

工藤:今回あるベースキャンプを支援してきて、200人のところに190食しか支給できず、彼らが食べなかったのを見た、分け合っているのを見たというような報告が上がってきています。たとえば行方不明者の捜索のためにガソリンがほしいというリクエスト等、組合にはいろいろな電話がかかってきます。

 支援しながら思いだした言葉が、「乏しきを憂えず、等しからずを憂える」です。日本人は、貧しいとか少ないということに対しては、あまり感じない民族なのだと。「和をもって尊しとなす」という思いも抱きました。この国では、震災前の状態でも、一千兆円にのぼる借金や、超円高の状態、経済協定の遅れや、少子高齢化の状況、国のトップセールスのやり方などに相当危機感があった。震災でまたさらにきつい状況になってきて、エネルギーの話などいろいろと出ている。

 しかし、そんな中、私は日本の強さを切に感じています。私たちの強さは、これではないかと。我々の産業は、海外にモノを売っています。一般的に多くの製品は1年2年の保証無償の期間がありますが、その後全くサポートしないものが案外多い。しかし、造船業や鉄鋼業もそうですが、我々は非常に長い期間に保証無償をやりながら、お客様とタイアップしてずっとやってきたビジネス・モデルを積み重ねているのです。

――そこに強みであるということですか。

工藤:ここが私たちの強みではないかと思います。なおかつ、我々には技術力がある。我々のモノづくりの考え方は、日本の製品のすべてに入っているように思います。我々の考え方は欧米のビジネス・モデルと全く違うし、このビジネス・モデルで闘っていけば、全く問題ないとも思えるのです。

長いスパンで物事を考えるビジネスモデルで世界と闘うべき

――震災で日本の強みを見直したということでしょうか。

工藤:もっと長いスパンでものを考えるビジネスのやり方で、もっといろいろなことができないかと思っています。

――日本人の忍耐強さと誠実さがビジネスでも強みだということでしょうか。

工藤:まちがいなく世界で一番勤勉で優秀な国民だと私は思っています。モノづくりにしてもそうでしょう。これを生かすには、長期的なスパンでものを考えていくことが大事です。原発の問題もすぐには収束しないかもしれない。しかし、我々は先に目標があればそれを目指していく民族だと思います。国として今こそそういう方向性を示すべきだし、そこに向かって行くのが日本人ではないか。私自身も、組合員にそう話しています。

――10年、20年先の日本の姿を考えながら行動するということでしょうか。

工藤:私たちの造っている製品は特にそうです。造船にしても2年はかかりますし、原子力発電所も時間をかけて造っています。入社して施設が完成する前に退職されている方もいます。ロケットも小型旅客機も鉄鋼もしかり。鉄鋼製品は、長い時間をかけてあれだけの品質ができています。時間的に、我々は皆、非常に長い考え方をしています。

――日本の誇る技術は、実際に組合員の方達が作っているわけですね。

工藤:はい。たとえばキャタピラ屋、建設機械も我々の組合員です。橋もそうですし、さまざまな復興に役立つ機械を造っている連中がたくさんいるわけです。そうした現場で、計画停電など電気が止まったことが我々には衝撃的でした。仕方がないとはいえ、復興のために作業している現場では、電気を止めないでほしいと要請しながら作業を続けました。

――昨夏の節電要請はずいぶん厳しかったですか。

工藤:そうですね。ただ大手企業では自家発電を持っている所が幸い多かったので何とかなりましたが、小さい企業はただでさえ電力を使うところが多いので、本当に大変でした。