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GDP拡大を求める発想の転換が必要に

浦野光人氏・経済同友会「低炭素社会づくり委員会」委員長/ニチレイ会長に聞く[後編]


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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今後の温暖化対策の焦点は、業務部門と家庭部門の削減

――日本の今後の温暖化対策についてはどう考えていらっしゃいますか。

浦野:「2020年に温室効果ガス25%削減」の大前提は、2030年には原子力発電が全発電量の約53%を占める計画でしたから、そこが崩れた今、単純計算では「そんなことはあり得ない」ということになる。それでも、今回の夏を過ごした後で考えてみると、本当に遠い数字かというと、必ずしもそうでもないだろうと思います。

――温室効果ガスは、まだ大きく削減できる可能性があるということでしょうか。

浦野:産業部門の削減の余地は、ほとんどないと思います。産業界の排出削減が大きく進むということは、海外への移転が進むということで、つまり日本のGDP(国内総生産)がなくなっていくと言う話です。しかし、日本全体の排出量の6割近くを占める運輸部門と業務部門、家庭部門の3部門で、厳しいかもしれませんが、3割削減の可能性はあるわけです。原発がまずまず動いていれば、新しい原発をつくっていかなくても、LNG(液化天然ガス)などの火力発電、あるいは石炭の新しい利用方法を含めて二酸化炭素(CO2)の排出を減らしていけるでしょう。

 2020年の目標には、まだ10年近くあるわけです。この3部門はハードやソフト、そして気持ちの面でも、産業部門に比べるとほとんど何もやっていなかったに等しい。ハード一つとっても、新しくつくる家の場合に、耐震と同じように、例えば「防熱は30㎝にする」「三重窓にする」「自家消費用に太陽光発電をつける」などを建築基準法で義務付ければ、温室効果ガスの排出量は大きく変わってくる。運輸部門では、排出量ゼロの電気自動車が登場するなどハードが大きく変わりつつありますが、ソフト面での取り組みも重要です。例えば、富山では「車がいらない生活ができるようにしよう」と、おじいさんもおばあさんも病院をはじめ生活に必要なすべてのところに電車で行けるような町づくりをしています。