宮井真千子・電子情報技術産業協会環境委員会委員長に聞く[前編]

震災を乗り越え、最先端の環境技術で世界をリードしていく


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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ガバナンスされた適切な情報の発信と受信が重要に

――東日本大震災とそれに続く原発事故では、リスクをいかに国民に伝えるかが問われました。どのようにお考えですか。

宮井:情報コミュニケーションは非常に重要だと思います。業界の代表としてのコメントは差し控えたいと思いますが、パナソニックとしては、常に適切な情報を発信し受信していないと事業活動に支障が出るという懸念があります。

 ビジネスをしていると、もちろん、ほかの局面でもそうですが、信頼関係の構築が重要なポイントになります。社会に対してもそうですし、国際的にもそうです。日本と諸外国との関係においてもそうです。結局、信頼のベースになるのが情報コミュニケーションであると思いますので、適切なタイミングで適切な情報を発信していくことが非常に重要だと考えています。

――製品を輸出する際に、放射能の問題などで風評被害と思われることはありましたか。

宮井:パナソニックの事業においては、風評被害の影響は少し出たかもしれません。ただ、日本の品質に対する信頼はもともと高いものがありますので、しっかりと検査体制などを整えていけばそれは解消されるし、事実、解消されてきたと思います。当初は、やはり混乱はしました。

 しっかりと検査をしてお届けすれば、当然、信頼は回復するということです。特に最初のコミュニケーションが重要だと思います。そこが適切でなければどんどん効率が悪くなってしまいます。後手に回れば、回復していくために非常にパワーも時間もかかるので、初動が大事だと思います。

――震災直後、社内外の連絡体制はどうでしたか。

宮井:社会的に通信が十分でないのは共通の事態だったと思います。パナソニックでは、事業活動についてはサプライチェーンがオンラインで結ばれていますので、情報が途絶えて、何週間も入ってこないということはなかったように思います。

 販売側の拠点については震災が起こって2、3日の内には被災状況がわかりましたし、現場に営業を担当する社員が入って復興に努めたため、復旧は早かったようです。パナソニックには系列の販売店である「パナショップ」がありますので、被災された「パナショップ」に本当にすぐに飛んでいき、一緒になって対応にあたりました。

――それは心強かったでしょうね。迅速に現場に駆けつけることが大事かと思います。

宮井:そういう点ではパナソニックの動きは素早かったと思います。全社的にも、災害が起こった翌日には、本社構内に「全社緊急対策本部」を置き、そこにすべての情報が集約されるようにしました。毎日、日々の状況をアップデートして状況を伝えていき、社長の指示の下に全部動かしていきました。

――緊急事態においては、何よりも情報を知りたい。命令系統も重要です。

宮井:そうです、きちっとガバナンスがされているということです。阪神淡路大震災では関西圏が大きく被災しました。その時の経験や教訓がずいぶんと生かされています。

「パナソニックでは震災の翌日には全社緊急対策本部を置き情報を集約した」と話す宮井氏