北京市、大気の“軽微汚染”からの脱却目指す


国際環境経済研究所理事長

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 昨年12月、「北京の大気汚染レベルは「軽微汚染か」?」という表題で、北京市の大気汚染に関する米大使館と市当局の論争について報告した。

北京の大気の状況を米国が「Unhealthy(不健康)」と評価したことに対し、市環境局が「軽微汚染」と反論したという話である。北京の大気汚染測定については、米大使館が粒径2.5μm以下の浮遊粒子状物質濃度(PM2.5)について公表しているのに対し、市環境局が粒径10μm以下(PM10)で管理しているという違いはあるが、「Unhealthy(不健康)」という評価と「軽微汚染」という市当局の“認識”には大きな開きがあった。

 このことが、大気汚染の健康影響を懸念する市民の関心を呼びつつあったが、今年1月6日付の中国各紙によると、北京市政府は、ぜんそくなどの疾病との関連性が指摘される2.5μm以下の浮遊粒子状物質濃度(PM2.5)の研究観測データの公表を決定し、早期に公表することにしたという。

 市トップの劉淇共産党委員会書記は「市民の美しい生活を送りたいとの新たな期待に沿うものだ」と述べ、きれいな空気を渇望する民意を重視した決定だと表明した。一方、中国国務院の李克強副首相も昨年末、PM2.5観測に向けた準備を行うよう指示。時事通信によると、上海市や広東省などでも、厳格な基準に基づく観測が展開され、環境保護対策が強化されているという。

 浮遊粒子状物質濃度の管理をPM10からPM2.5に変えることが本来の目的ではなく、北京オリンピック以降、深刻さを増す環境汚染を根本的に改善することが不可欠。市民の生活が豊かになるにつれて、中国でも環境意識が年々強くなっており、政府も民意を無視できなくなってきたようだ。

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