二項対立の構図がエネルギー政策を停滞させる


ソフィアバンク副代表

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子孫の選択肢を狭めない冷静な議論を

 福島第一原発の事故を体験し、現代の人間の手に追いきれない放射能の影響を目の前にして、多くの人が、原発依存から脱却を求めるのは当たり前であろう。

 今や、国内のほとんどの政党が、原発依存からの脱却を宣言し始めている。本来ならば、総理による原発依存からの脱却宣言を受け、間髪置かずに原発依存からの道筋を具体的に論じて然るべきだろう。

 しかし、どう考えても、自然エネルギーが原子力発電を代替できるほど成熟するには数十年かかるだろうし、化石燃料の使用増は温暖化問題にマイナスであるのだから、原子力発電をゼロにすると目標設定しても、数十年先のこととなる可能性は高い。そのことを早く明示することが、原発依存の見直しを含めた現実的なエネルギー政策の検討を早め、結果として、国民の安心につながる。

 もちろん、これまでの基準で原発の再開を認めるべきではなく、厳しいストレステストは必須であり、かつ原子力行政全般を見直すことも必須である。

 こうした明確な方針を打ち出したうえで、原発の研究は続けていけばよい。その結果、今は不可能と思われる安全確保のための技術も確立されるかもしれない。あるいは、原発よりも早く、自然エネルギー技術が十分な実用性を確立できるかもしれない。

 二項対立の構図を作り十分な検討もないまま早々にどちらかに決めることは、現代を生きる我々にとってだけでなく、将来を生きる人々にとっても、選択肢を狭められた不利な状況に追い込むことになりかねない。

 不毛な二項対立の議論に踊らされることなく、現代を生きる我々と未来を生きる子どもたちのために、どのような準備を始めるかが問われているのではないだろうか。

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