セキュリティに重点を置いたエネルギー政策への転換を


国際環境経済研究所前所長

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石油依存の軽減と調達先の多様化

 化石燃料の構成比も変わった。国際エネルギー機関(IEA)の取り決めで石油火力発電所の新設が禁止され、石油から液化天然ガスや石炭への燃料種転換が推進された。一般電気事業者の発電電力量に占める石油火力の割合は、73年に約75%だったが、98年以降は、ほぼ10%以下で推移している。

 同時に、エネルギー輸入先の多様化と資源の自主開発も進んだ。日本の原油輸入先は、輸送距離の点で有利な中東諸国が最も多かったため、常に政治的不安定性に振り回される状況であった。そうした状況から脱却するため、原油輸入先を東南アジアにも多様化する一方、石油より資源賦存が分散している石炭や天然ガスに燃料転換するよう、政策的に誘導してきた。

 しかしながら90年代に入ると、国際的な石油市場の発達と原油価格の安定化のなかで、東南アジアからの石油輸入が減少して中東依存が再び高まった。その後、豪州からの石炭輸入が増加したことによって、化石燃料全体でみると中東依存度は低下したが、それでも2008年において47%と、米国の18%やフランスの13%などと比べても、圧倒的に高い状況である。