「節電生活」定着で電力需要は抑制できるか?


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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中長期的には電力需要は増加する

 問題は多くの火力発電所が再開する来年度以降だ。原子力発電所の再開に時間がかかるようであれば、原子力発電所からの発電の落ち込み分を補うために、火力発電所の稼働率向上が必要になり、二酸化炭素(CO2)排出量が増加することが予想される。 

 そうさせないためには、まず、人々の生活様式の変化による電力消費量の減少がある。バブル経済の崩壊を境に生活パターンの変化があったように、今回の震災により節電生活が浸透する可能性がある。また、現在定期検査中の柏崎刈羽発電所2、3、4号機の再開時期によっては、太平洋岸にある原子力発電所の落ち込み分の一部を補える可能性もある。

 しかし、中長期的には、電力の利用は業務用、家庭用を中心に増加する可能性が高い。家庭での電力消費増に結び付く世帯数の増加は2015年まで続くと予想されている。クリーンなエネルギーである電力が求められる傾向も続くであろう。従来の計画では、新設の原子力発電所がこの需要増のかなりの部分を担う予定になっていた。たとえば、東電は2020年までに415万kWの原子力発電所を建設する計画を発表していた。建設が遅れれば火力発電所への依存が高まり、CO2排出量が増加する。

 まだまだ不確定要素が多く、将来の温室効果ガスの排出量について、現時点では予測が困難だが、今回の震災により温暖化対策の見直しが必要になることは間違いない。

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