京都議定書は問題解決を遅らせる

日本は実質的な排出削減で世界に貢献を


国際環境経済研究所前所長

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1国でも反対すれば国際枠組みは成立しない

 ここまで国際交渉が難航している理由の一つは、国連が全会一致を基本原則としていることにある。コペンハーゲン合意も実は正式な国連決定ではないのだが、1国でも反対すれば、何も正式に決まらないという交渉方式には限界がある。こうした方式では、適時適切に国際合意を得ることは極めて難しくなる。真の解決にならないとわかっていながら、京都議定書を延長しようという議論が出てくるのには、こうした背景がある。新しい理想的な国際枠組みはいつまでたってもできないのではないか、という懸念がその原動力となっているのだ。

 日本政府は今、アジア諸国との間で2国間で取り決めを結び、日本の先端的技術を使って、相手国で二酸化炭素の排出削減プロジェクトを進めようとしている。高効率な火力発電所の建設などを支援することで、途上国に対して低炭素型の成長を手助けするというものである。こうした2国間や、地域的な協力の枠組みの有効性を認知させていくという外交努力をしてもらいたいところである。

 京都議定書延長は日本に不利だから反対というのではなく、真の解決策を遠のかせ、逆効果になるというメッセージを発信し続けることが大事である。世界の排出削減の取り組みを後退させてしまう京都議定書延長には絶対に同意しない。こうした強い決意が、国のリーダーに望まれる。

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